移住に関する座談会を終えて

hiroki okumura / PIXTA(ピクスタ)

欲しかった暮らしラボでは、移住をテーマに研究を進めています。

現在住んでいる都市の環境から、地方で自然の中で暮らしたいと考える人が増えています。地方移住や二拠点居住の増加には様々な背景が存在します。まず、コロナ禍による仕事の場所選びの変化が挙げられます。次に、自然の摂理に寄り添い、生命力を学ぶことが地方移住者の中で重視されているなどです。
しかし、その希望や目的は人それぞれです。そこで、地方に住みたいという方々の意見をお聞きしたくアンケートを実施しました。今回は、移住に関心のある方のみアンケートに回答いただきました。

アンケートの結果は、欲しかった暮らしラボにて「【結果】移住に関するアンケート(1)(2)(3)」(2024526日、65日、79日掲載)で報告しています。

アンケートでは、移住のタイミングは「定年退職後の移住」が51.3%と半数を超え、次いで「一人暮らしをするタイミング」20%、「転職するタイミング」18.7%、「子どもが独立するタイミング」15.3%と続き、「定年退職後の移住」を人生の新たな章の始まりと見なす傾向が強く出ていました。これらの結果を踏まえて、529日から計6回にわたって行った「移住に関する座談会」の内容を紹介します。

 

座談会の目的
移住をテーマに行ったアンケート結果を踏まえ、地方移住に関心のある方々の意見を直接お聞きし、解像度を上げたい。 

 施日
2024年5月29日(水)、5月31日(金)、6月1日(土) 

 参加者
20代〜60代の男女、計12名の方にお話を伺いました。 

 座談会の要約
今回のアンケート及び座談会では、定年を移住のタイミングと考えている人が多いことがより明確になりました。
確かに移住の兆しは社会の変化の中で多少はあるものの、まだマイナーな傾向にあると思われます。その要因は金銭的な側面が多いようです。若いうちから、働くことも含めて移住するのは、ハードルが高いようなのです。長崎に移住したIさんは、どこでも働けるスキルを身につけていて、今は金融機関にいますが、転職も厭わず、さらに自然豊かな場所に転居したいと言っていたのが印象的でしたが、彼は特殊なケースだと思います。
移住先については、街と自然との境界線。しかし街側にあり、病院や買い物へのアクセスにも便利なところが良いと回答する人が、ほとんどでした。 

・移住のタイミングは?
「定年退職後」という答えが、圧倒的に多かったです。 

 ・リゾート的か農的な暮らしか?マンションか戸建てか?
リゾート的な暮らしを望んでいる人が多く、農園をしたり、自給自足をしたりとは考えていないようです。マンションか戸建てかだと、戸建てを望んでいる人の方が多かったです。駅前立地のマンションなのか、自然が見える眺望の良いマンションを望んでいるのか、判断に迷うところです。 

 ・移住するなら、地方の大都市か、地方の小さな市町村か?
大都市へアクセスが便利な、地方の大都市が良いようです。これは特に老後の通院や、また仕事面でも大都市に行く必要があるからかもしれません。 

 ・仕事について
定年退職まで現在の仕事をして、それからゆっくりと過ごしたいと考えている人が大半でした。中には早めに定年退職を迎えたいという人もいましたが、割合からすると少ないです。 

 ・ゆっくりとした時間について
多くの人は都会での「時間に追われた暮らしから解放されたい」と言っていますが、一方で現実問題、定年後までは我慢するのだと思われます。また夫婦間での意見の合意も、課題の1つのようです。 

 

 座談会を終えて
座談会の開始前は、「資本主義を前提とした現在の社会の仕組みに対して、違和感のある人が多いのではないか?」と考えていましたが、そう考えている人は少なく、田舎であっても収入面、経済面での豊かさが必要と考えているようでした。そう考えると、定年前後で移住したいという希望は、よく理解できます。また仕事についても、現在の仕事にやりがいや生きがいを感じているようでした。
定年退職後、ある程度の資金を持って移住するので、農的な暮らしや自然との接続についても、リゾート的な暮らしを望んでいる側面があるようにも思えます。しかしながら移住したいという人々の想いの変化の中には、近いうちに都会での仕事の仕方から遠のくことも、可能性としては潜んでいるとも思います。