飛び入り参加OK!公園から始まるママの繋がり
【公園のある暮らしインタビュー vol.7】 あおぞらおしゃべりパーティー 橘敦子さん
つくば市内の公園で、子育て中のママさんや妊婦さん、近所に住む人が気軽に集まり、おしゃべりができる場所「あおぞらおしゃべりパーティー」(以下、あおぱ)。2021年3月にスタートしたこの場所は、助産師、怪我予防トレーナー、災害対策インストラクターという異なる専門分野を持つ3人のママさんによって立ち上げられました。
「平日昼間の子どものお出かけに悩んだ」という思いから立ち上げた3人の元には、「同じ悩みを持つ人に会いたい」「誰かと話したい」とママさんたちが子どもを連れてやってきます。今回は、あおぱ主催メンバーの災害対策インストラクター橘敦子さんにお話を伺いました。
参加できるコミュニティが見当たらない
橘さんは、東京生まれ東京育ち。子ども向けのキャンプやプレーパーク(※)を主催するNPOのスタッフを経験したことから、遊びや「生きる力」に興味を持つようになりました。
「私にとって生きる力とは、自分が心身ともに健康でいられるために、何が必要かを理解して、必要な時に必要なことを実行できる力のことです。特別な体験ではなくても、遊びのように好きなことに対して、思いっきり創意工夫することで育つ力だと考えています」。
橘さんが「生きる力」についてこう考え出した時に、偶然にも災害対策を学ぶ機会に恵まれ、危機管理リーダー教育協会の認定インストラクターを取得します。この時の学びから、「生きる力」に直結する災害対策に興味を持ち、サバイバル術を学べるブッシュクラフトインストラクターの講習も修了しました。
そして、結婚・出産を機に、友人の評判を聞き都内から守谷へ。さらに子育てしやすい環境を求めて、2020年につくばへと転居します。
「つくばに引っ越して感じたのは、大型商業施設には人がたくさんいるのに、駅前が盛り上がりに欠けるということです。新しくやってきた人が多いせいかコミュニティが希薄なように思いました。ちょうど災害インストラクターの資格を取得した後だったので、隣近所の人も分からない状態で、地震が起きたらどうなるのかと心配になりました。また、自分だけが災害に備えても意味がないので、周りの人も同じように知識をもって、みんなで安全を保っていきたいとも思うようになりましたね」。
お子さんの出産直後ではありましたが、その場にあるものを創意工夫して楽しみながら生かす防災講座をしたいと、2020年12月には「つくばセルフ防災ラボ」を立ち上げます。そして2021年3月からはママ友と一緒に前述の「あおぱ」を開始しました。
※プレーパーク:木登りや泥んこ遊びなど、日常なかなかできなくなった遊びを通じて、子どもたちの自主性や冒険心を育くみ、自分の責任で自由に遊ぶことを大切にした遊び場・居場所。
公園だからできること
つくばで縁あって知り合った、助産師の松永さん、怪我予防トレーナーの境さん、そして災害対策インストラクターの橘さん。ちょうど3人で話をしていた時に、「昼間の子どもとのお出かけは悩んだから、そういうママさんの憩いの場所がつくれたらいいね」という話から、「あおぱ」を立ち上げることを思いつきました。3人それぞれに専門分野があり、気軽に専門家に相談できる場になればいいと思ったことも、それを後押しします。
また橘さんの中には、つくばで暮らし始めた頃から気になっていた駅前の閑散とした光景も心にありました。ママさんに限らず、近所の人と顔見知りになることで、いざというときに助け合うことができて、それが防災につながっていって欲しいという思いが、あおぱの立ち上げにはあったと言います。
「防災を特別なこととして捉えるのではなくて、日常の小さなきっかけから関係性を作っていけば、いざというときに必ず役立ちます。公園であおぱの活動を始めたのは、外から見ても何かイベントをしていると一目でわかるし、お散歩の途中でも、誰でも気軽に参加できるようにしたかったからです」。
公園は、3人の思いを汲んで「あおぱ」を開催できる絶好の場所でした。開催を決めた時期はちょうど新型コロナウイルスが蔓延し、室内での人との距離が気になるタイミングでしたから、屋外の環境はうってつけでした。
また、つくば市内の公園は遊具が少ないので、青空の下でシートを広げてゆっくりするだけでも親子で楽しい時間を過ごせるということを知ってほしいという思いもあったそうです。
「子どもはどんな場所・どんなことでも遊びにして、新しい発見をしていきます。大人にとっては何もないように見える公園でも、子どもがどんなことに目を向けているか、じっくり観察しているだけで親としても充実した時間になります。遊具がないところで何を感じながらどう過ごすか、こういった試行錯誤は、生きる力につながっていくと思うんです」。
こうして、毎月第1、第2、第3水曜日につくば市内の公園にて実施する「あおぱ」が始まりました。
公園を使って想いを叶える
「あおぱ」を開始して約1年。地域のフリーペーパーやSNSを通して発信を続け、気候や時期によって0人のときもありますが、多いときでは10名以上の人が集まるようになりました。参加するにあたっては事前の登録もいらないので、初めてでも気軽に参加することができます。水曜日に開催しているのも、ちょうど週の真ん中でママさんの心身の疲れが溜まりやすいからという、現役ママさんならではの気遣いでもあります。先日も「コロナが気になって参加できなかったけれど、ずっと参加したかったんです」というママさんが参加してくれたと橘さんは嬉しそうです。
一度集まれば、出産にあたって準備するものや離乳食などの子育ての相談はもちろん、腰痛といったママさんによくある体の不調などの相談が、主催メンバーへ寄せられます。相談がない日ももちろんあって、近所にできたスーパーの情報交換など、ママさん同士が気軽におしゃべりを楽しめる場所となっています。最近では、公園の利用についての相談も寄せられるそうです。
「私の防災講座に参加してくださったママさんから、子どもが歩いて行ける距離で色んな経験をさせてあげたいと、公園で防災サバイバル講座を一緒に開催する提案をもらいました。主催のママさんがチラシを作ってくれて、私が講義をして。そんな繋がりも生まれています。他にも、リラクゼーションやヨガ教室をしている方から、公園の利用方法について相談があったり。公園という開かれた場所であおぱを開催している意味があったなと思った瞬間ですね」。
公園を使って自分がしたいことを叶えたい、そんな思いを持っている人が実はたくさんいるのではと橘さんは言います。
「私自身はプレーパークを主催するNPOの経験から、公園の利用に抵抗はありませんでした。けれど一般的には、公園が自由に使えるということを知らない人も多いと思います。あおぱも、毎回行政に申請をして、公園を利用しています。室内でもできることを、青空の下で新鮮な空気を吸いながらすると心身が解放されて、気持ちがいいものです。また、公園は子どもにとっては発見の宝庫。特別な遊具はなくても、雑草を抜いているだけで楽しかったり、そこにあるものでおままごとができたり。無ければ無いなりに、自分で遊ぶものはいくらでもつくれます。つくば市内の公園をよく見てみると、虫刺されに効く野草が生えていたりもします。公園は使うもの!まだまだ楽しみ方はあると思いますよ」。
2022年1月から開催公園を一部変更して開催される「あおぱ」。あおぱを通して、新たな人の繋がりが作られることはもちろん、公園の使い方の可能性も広げてくれるように思います。
■今後のあおぱ開催スケジュール
第1週 みどりの中央公園
第2週 竹園西広場公園
第3週 研究学園駅前公園
毎月第1、第2、第3水曜日の10時〜12時に開催しています。開催時間中は、いつ来て、いつ帰っても問題ありません。事前の登録は不要ですので、お気軽にご参加ください。
開催場所や日時は変更になる場合もあるので、公式サイトや主催メンバーのSNSをご覧ください。(https://sites.google.com/view/aopa298)
橘 敦子(たちばな あつこ)
1983年東京生まれ/つくば市在住
ak park(つくばセルフ防災ラボ)代表/ibrk.fun 代表
JUSS認定災害対策インストラクター
JBS認定ブッシュクラフトインストラクター®
NCAJ認定キャンプインストラクター
【Think Globally, Act Locally.】
大学で国際法・国際問題を学ぶ中で「まずは足元の課題を解決できるように」と思い、地域課題の解決をテーマに広告メディア会社2社、NPO法人1社を経験。
地域の個人店や地方のレジャー施設等の集客企画に携わりながら、地元で子どもキャンプ等の体験活動を行うボランティアにも参加。その縁で危機管理やサバイバル技術を学ぶ。
妊娠出産を機に退職し、東京から茨城県守谷市に移住。2020年4月からつくば市へ。
都内に通う新住民が多いTX沿線地区の災害時の備えや協力体制について課題を感じ、2020年12月に「つくばセルフ防災ラボ」を立ち上げ。
「自助」を促進する「防災講座」や「防災デイキャンプ」などを開始。また、「共助」を促す地域コミュニティづくりの一歩として、誰でも参加できる「あおぞらおしゃべりパーティー」を市内の公園で定期的に開催中。
ak park(つくばセルフ防災ラボ)
https://lifeisplaypark.com/
あおぞらおしゃべりパーティー
https://sites.google.com/view/aopa298