魔法瓶のような家
一部の都市では、緊急事態宣言が継続しており、家で過ごす時間が長くなっています。寒い日が続く中、家の暖房代が気になる方も多いのではないでしょうか。 また、家にいる時間が長いせいか、窓ガラスの結露が例年より気になっている方もいるのではないでしょうか。今回は、家の温かさについて考えてみました。
脱炭素社会・カーボンニュートラルを目指す動きが高まる中、住宅業界はより少ないエネルギーで快適に過ごせる家をつくることが求められています。住宅で消費するエネルギーの約1/4は暖房といわれており、少ないエネルギーで快適に過ごせる住宅をつくることは、環境負荷の軽減になり、家計も助けることにつながります。
省エネ法や品確法により、住宅の断熱材の施工範囲や厚さの基準が上がり、ペアガラスも普及して、家の断熱性能が上がってきました。 そして暖房器具の省エネ性能も上がったので、ひと昔前と比較して、少ないエネルギーで冬を温かく過ごせるようになりました。しかし、多くの家庭で、いまだに冬は長い時間暖房器具をつけているのが実情です。 そう考えると、今より環境負荷を軽減するためには、暖房器具の運転を止めても、室温が下がらない家ができれば理想です。つまり、温かい飲み物が長時間冷めない、魔法瓶のような家ができれば良いのです。
家の中が冷えるのは、外気の影響を受けているためです。 家の中に冷たい温度が侵入してくる経路は大きく2つです。
ひとつは、「ヒートブリッジ」と言われる、外の温度が外壁を伝って内部へ侵入してくる現象です。それを抑えるために、建物の壁や床や天井には、断熱材が入っています。しかし、建物の壁面で外の温度が一番侵入しやすいのは窓です。窓ガラスが結露するのは、冷たい水が入ったガラスのコップが結露するのと同じ理屈ですから、外の冷たい温度が窓ガラスの内側まで伝わってきているということなのです。ですから、大きな窓のほど断熱性能を上げることが重要になります。
もうひとつは、給気口や建物の隙間から直接外気が入ってくる経路です。キッチンやお風呂の換気扇を回したときは、特にそうです。新型コロナウィルスの影響で、生活の中での換気は、以前より大切になってきましたから、環境負荷の観点からも、外気の影響を受けずに換気を行うことは、以前よりも重要になってくると思います。住宅の壁・床・天井を、魔法瓶の断熱層のようにしっかりガードして密閉して、外の温度が室内に伝わらないようにする一方で、換気のために外の空気を室内に取り入れなければならないという、この矛盾を解決することが求められてくるのではないかと思います。今の住宅はどんなに壁・床・天井の断熱性能を上げても、少しだけ口が空いた魔法瓶のような状態なのかもしれません。
換気のために取り入れる外の空気の温度差を解消する設備として「全熱交換器」があります。外気を室温になじませてから、室内に取り入れる機能をもつ換気扇です。しかし少々高価ですし、春や秋など気候がいい時期には、外気の温度をあまり気にする必要がありませんので、一般の住宅にはあまり多くは普及していません。しかし、このように考えてみると環境負荷の観点からも、今後は積極的に取り入れていくべき設備かもしれないと思います。
断熱密閉と換気が両立した魔法瓶のような家ができたらまさに魔法。一度、暖房で温めた室内の温度は長時間冷めないので、一日中は暖房をかけなくて済むかもしれません。
一日中せっせと温風を送り出してくれている暖房器具と窓の結露を見ながらそんなことを考えてみました。結露した窓ガラスに子どもたちが絵を描く風景を見られなくなるのは、少し寂しい気もしますが。
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