日常の見直し 居心地について考える

fu20xx / PIXTA(ピクスタ)

「居心地」とは、何なのでしょうか?
以前、欲しかった暮らしラボで実施した「日常の変化についてのアンケート」(2020年11月26日配信)では、新型コロナウイルスの影響によって、家時間や家族との時間が増えたことから、家の中を整理整頓したり、家具の配置を変えたり、DIYをして居心地を工夫していることが見えてきました。今回は、居心地とは何かを、あらためて考えてみます。

居心地の感じ方は、人それぞれだと思います。同じ人でも、その日の気分や季節によっても違うでしょう。自然豊かな田舎が心地よいと思うときもあれば、大都会の喧騒が心地よいと感じるときもあると思います。また家の中でも、書斎で調べ物をしている時が心地よいと思うときもあれば、リビングで家族の気配を感じながら読書をするときに心地良さを感じこともあるでしょう。居心地は本人の体や心の状態はもちろんのこと、建築的な要素が関係しています。部屋の広さや形、天井の高さ、遮音性能や断熱性能、温度や湿度、窓からの日差しや風通し、窓からの景色、壁や床の色、飾る絵や棚に置かれた小物、流れてくる音楽、など多くの要素が複合的に絡み合って居心地に影響を与えているように思います。

家の中には大きくわけて3つの居場所があり、それぞれに居心地があります。一つ目は書斎など誰にも侵入されないプライベート空間に一人でいるとき。これは誰もが居心地がよいと感じます。二つ目はリビングダイニングなど、家の中の家族が集まるパブリック空間で食事や団らんを楽しんでいるとき。相手との関係性にもよると思いますが、一般的には楽しくて居心地がよい状態だと思います。そして三つめは、リビングダイニングのようなパブリック空間にいながら、そこにいる家族や友人がそれぞれ別のことをして過ごしているときです。リビングにいる家族が、ぼんやりテレビを見ている人もいれば、本を読んでいる人もいて、スマホを見ている人もいるという日常の光景です。こののんびりとした時間こそ、人は無意識に、よりよい居心地を求めているのではないかと思います。

家族やカップルでも、お互いが別々のことをしているときに居心地がよいと感じるためには、お互いが程よい距離をとることで生まれる個の領域が必要だと言われています。住宅の中の限られたスペースの中では、なかなか思うようにならないものですが、リビングダイニングのようなパブリックスペースの中でも、たとえば自分の定位置にしている椅子を置く場所を少し変えて家族との距離をとるだけで、プライベートな領域が確保されるようになり、自分の居心地がよりよくなるかもしれません。

建築家の山本理顕氏は「社会の最小単位は家族から個へ」と提唱し、家族それぞれが玄関を持った個室をもち、集まるときは家の中心に設置されたリビングに集まるという住宅を作りましたが、実際には日本の住宅事情において、家族全員が個室をもつことは難しいのが実情です。今年の外出自粛と在宅勤務によって、あらためて家で過ごす時間、家族と過ごす時間の良さが見直されましたが、一方で家の中でプライベートな場所を求め、それはトイレとバルコニーぐらいしかないという現実を感じた人も多かったのではないでしょうか。

インターネットの登場で常時接続社会になり、周りに誰がいようとも、スマホさえあれば個室に入っているように自分だけの世界にのめりこむことができるようになりました。これは住宅で実現しにくいプライベート空間を違った形で叶えてくれているようも思います。今後も、家で過ごす時間が増え、家族と過ごす時間が増えることで、その反動のように家の中にプライベート空間が求められるとしたら、リビングのいつも座る椅子のそばにあるコンセントこそが、居心地の良さなのかもしれません。

家で家族と過ごす時間が増えた今、リビングダイニングのような家族が集まるパブリック空間におけるプライベートな領域を見直し、居心地を探求してみてはいかがでしょうか。

ミニアンケート

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