共助の仕組みと地域通貨
【連載】コミュニティについて vol.06
地域通貨について
経済の問題を考えるとき「地域通貨」の問題は重要です。このことは一度コラムにも書きましたが、地域通貨を考えてみることで、「お金とは何か?」を考える契機にもなるでしょう。地域通貨とは、ある特定のコミュニティ内で、法定通貨をつかわずに、モノやサービスの売り買いをする仕組みです。日常で必要なものは、お互いの持ち物や能力、生み出したものを、地域通貨を通して交換していきます。重要な視点は、地域通貨をもらう人も払う人もいて±(プラスマイナス)はありますが、コミュニティの全員の総和は常に0になることです。そこには、お金によって破綻する人はいません。といっても、現在の暮らしでは法定通貨がまったくないと生活が成り立たないとは思いますが、法定通貨と地域通貨を組み合わせることで、高い収入でなくても暮らしていけるという可能性があります。
例えば田舎で生活していると、野菜などをもらったりすることも日常的によくあります。そのかわり、掃除の手伝いをしてあげたりと、何かできることで応援したりします。地域通貨とは、こうした地域内での助け合い、関わり合いを促進する役割も持ちます。お金をもらうには気がひけるような些細な仕事でも、地域通貨ならあまり気にせず交換できるかもしれません。
こうした地域通貨を使うコミュニティで大事な役割を持つ人はお世話好きな人です。人と人をつないでいく人、小さな仕事でもコミュニティ内に仕事を作り出していく人です。実際こうした地域通貨は、地域の経済が危機になったり、失業率が高くなって仕事がなくなった時などに効力を発揮してきました。この地域通貨の難点は運用が面倒だったりして、長く続けることが難しいという過去がありました。しかし最近は、ブロックチェーン技術などが発達し、こうした課題を乗り越えるあらたな局面にも入っているといえます。
コミュニティーで乗り越える
前回のコラムでは、「自分の成長のためのコミュニティ」に続いて、地域や社会(自分の所属するコミュニティ)の発展にどう貢献するかということを、「社会の課題と自分を重ねる」ことで、自らを成長させていくという趣旨でした。しかしこうした仕事をボランティアでするのであれば、さほど問題にはならないのですが、これだけで自分の生活を維持しようとすると難しくなります。そこでこうした地域通貨を使うようなコミュニティがあると、これまで書いてきた様々なコミュニティの活動と自分の暮らしが、より近づいてくるとでしょう。それは今までの経済システムの矛盾とも言えます。私たちが生きてきたこの20世紀の世界は、資本主義というお金を生み出す仕組みを中心に考えてきた社会です。しかし、自身を成長させていこうとすると、また周りの困っている人を助けていこうとすると今までの社会の仕組みと相違が生まれるのです。社会起業家と呼ばれる人は、そうした壁を乗り越えて進んでいるのですが、そこを1人で突破するより、多くの先輩や仲間と一緒に考える方が良さそうです。
顔が見える仲間たちとのコミュニティは、本来社会がもっていた助け合いや福祉の問題を乗り越える鍵にもなりそうです。また、これらの総合的な解決に向かって仕事をしていくことが、自身の成長へとなっていくでしょう。
事例:一般社団法人Next Commons Lab
一般社団法人Next Commons Labは、過去にもこのコミュニティに関する記事内で紹介をしています。(2019年8月27日配信「「持続可能な社会」は、どう実現できるのか」)彼らは地域での起業をサポートするプラットフォームですが、次の取り組みとして、地域の活動を新たな経済圏として自立させていこう、という実験を行なっています。まだ始まったばかりですが、ブロックチェーンなどのIT技術を得意とする彼らですから、地域通貨と仮想通貨をつなげた新しい社会の枠組みを、つくろうとしているようにも思えます。
一般社団法人Next Commons Lab http://project.nextcommonslab.jp/
世界の地域通貨
世界には、たくさんの地域通貨があります。日本でも400以上の地域通貨がありますが、実験的な取り組みも含めると、もっとあるかもしれません。大きくは2つの目的で使います、①地域の相互扶助を目的としたもの、②地域経済の活性化を目指すものがあります。地域経済の活性化を目指すものでは生活の様々な場面で使えるようになるコミュニティもあります。NEW ECONOMICS JOURNALでは、世界の様々な地域通貨の事例が紹介されていますので、一度覗いてみてください。
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