生きるために暮らす、自給自足的な暮らし
生命の成り立ちは、生き延びることにあるのでしょう。その原点は食べること、眠ることです。より美味しく、そしてより安全に、快適にと、それらは進化してきました。それ以外にも排泄、入浴、種の保存としての性もあるでしょう。
特に現代社会はそれらが貨幣というものを媒介に分業して発展しました。狩りに行って獲物をとるのでなく、仕事でお金を稼いでそのお金でおいしい物を食べに行く。家を建ててそこで寝る。それが長い時間をかけて社会の常識になっていきました。ですがお金を媒介にするという、ある意味効率の悪い方法をとっているのです。農作物は自分たちが食べるために作っていたものが、売るための稼ぐためのものに。自分で住むための家が、誰かの人のために作るものになっていきます。特に産業が発展するためには、大量消費を前提にして同じものをたくさん作る必要があり、そのためには消費者の欲望を加速する必要があります。
ですがもう一度原点に戻って、必要なものは自分でまたは家族など、自分たちで作るという方法に立ち戻ることができないかと思うのです。少し歴史を振り返ると、1960年代、アメリカで『Whole Earth Catalog』という雑誌が5回にわたって出版されました。編集はスチュアート・ブランド建築家としてはバックミンスター・フラー、そして後のAppleの創業者、若きスティーブ・ジョブズも加わっていました。そこでのコンセプトはモノや知識を世界中から集め、自分の力で主体的に生きていくためのカタログ集でした。子どもの産み方から家の建て方まで書いてあったのです。高度に発達した貨幣を中心とした資本主義経済、大量消費社会へのアンチテーゼがその背景にあったのです。
現代の日本は特に、貨幣によるサービスや物の購入が前提になっている社会です。また都会であれば、お金さえ払えばどのようなサービスでも手に入れられることができます。それらの多くは高額で、手に入れるには労働して賃金を手に入れる必要があるわけです。
労働とは稼ぐということになるわけですが、生きるための作業は労働ではなくそれ自体が暮らしの一部ともいえます。しかも、モノがなかった貧しい時代に比べ、経済的な豊かさを享受した人たちが行う自給自足的な暮らし、とも言えるのではないでしょうか。パーツやキットなど自分でモノをつくるための知恵を手にしていく。事業の拡大や成長を目的にするのでなく、より質の高い自給自足的な暮らしに未来の可能性があるようにも思えます。
皆さんはどのように思いますか。
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