新しい欲しかった“持たない暮らし”
「デュオメゾン池袋」
【フージャースの建築めぐり】建築担当の裏話編
「フージャースの建築めぐり」シリーズの「建築担当の裏話編」では、作り手のこだわりや苦労した点など、広告やパンフレットでは知ることができない裏話に迫ります。フージャースのモノづくりに対するこだわりの姿勢を、感じていただけるかと思います。
DUO MAISON(デュオメゾン)は、投資・賃貸・買取再販事業を展開する(株)フージャースアセットマネジメントが手掛けるアパートメント事業です。
デュオメゾン池袋は、住みたい駅としても人気の池袋駅が最寄りですが、池袋駅は賃貸物件が多いエリアとなっており、他社物件に勝る価値をお客様に提供する事を意識してモノづくりをしました。こだわったポイントと、そのこだわりを直接会えないお客様へ伝えるための工夫を担当者が語ります。
担当者の紹介
フージャースアセットマネジメント
佐々木 花(ささき はな)
本物件では、初めて1人暮らしをする方や若いカップルが住むことをイメージしたモノづくりをしました。住まいにプラスアルファの価値を持たせられるように、IOTなどを取り入れた新しい暮らしの提案をしています。
フージャースアセットマネジメント
桑名 祐子(くわな ゆうこ)
テーマである“持たない暮らし”を、直接会えないお客様にどう伝えるのかが今回のポイントでした。不動産ポータルサイトでも伝えにくい魅力を届けるため、モデルルームや案内の仕方に工夫をしています。
都会の暮らしに温かみを
デュオメゾン池袋は、住みたい駅としても人気の池袋駅が最寄りですが、賃貸物件が多いエリアの為、他社物件を上回る価値を作らなければならないと思いました。
想定した入居者は、20〜30代の若い世代で、初めて1人暮らしや2人暮らしをする方です。さらに、その方たちが、初めて都心に出てきた方や新入社員だとイメージしたとき、都心に憧れはありながらも、どこかその冷たい雰囲気に心細さを感じるのではないかと思いました。住まいが心の拠り所の一つとなるように、軒裏を木目にして、室内から外を見たときに温かみを感じられるようにしています。夜、室内に明かりが灯ると、この木目が照らされて建物全体が浮かび上がり、入居者を温かく迎えてくれます。
新しい時代の新しい暮らし
ターゲットを深堀する中で、モノが溢れている今、サブスクやシェアといったモノの所持から利用の時代へと変わっていることに着目しました。住むことに関しても、もっと身軽さが求められていると考え、「持たない暮らし」をコンセプトにしました。
「持たない」ものは大きく分けると、鍵やリモコン、災害に対する不安、家具・家電、宅配BOX、自転車、オフィス、の6つです。
・IOTで鍵やリモコンを持たない
IOTとはInternet of Things(モノのインターネット)の略で、あらゆるモノをインターネットに繋ぐ技術です。これを活用し、デュオメゾン池袋ではさまざまな家電の操作や鍵の開け閉めなどをスマートフォンで一括操作できるようにしました。スマートフォンで玄関の鍵を開けたり、自宅近くまで帰ってきたらエアコンや照明が自動でつくようにしたりできます。
実際に入居された方はIOTに関心の高い方が多く、喜んでいただいている設備です。
・災害に対する不安を持たない
1階の共用部に各住戸専用の防災備蓄倉庫を設けました。災害に対する不安を軽減するための設備ですが、そもそもターゲットである若い世代の防災に対する意識は高くはありません。そこで、備蓄倉庫をはじめとする防災設備は、堅苦しさを感じさせないポップなデザインにすることを心がけました。
防災備蓄倉庫の前面に描かれたマークは、もしもに備えるという意味で英語の「if」から着想したデザインです。丸からはみ出すことで、入居者だけでなく、地域防災として役割も表しています。充電スポットやマンホールトイレなどの設備は、有事の際には同じ町会の方も使えるようにしました。
この辺りは周辺の地域に比べて避難所が少ないエリアで、東日本大震災の際には近くの避難所である小学校に溢れるほどの人が集まったそうです。そうした背景もあり、入居者とせめて同じ町会の方には災害に対する安心材料のある住まいにしたいと思いました。
この他にも、LUUP(電動アシスト自転車/電動キックボードのシェアリングサービス)のポートを敷地内に設けたり、家具家電のサブスクを用意したり、オートロックでも玄関前に荷物を置き配してくれるシステムを取り入れたり、さまざまな持たない暮らしの提案をしています。
生活のバランスを選べる間取り
間取りのメインは1DKで、全部屋に大型のウォークインクロゼットを設けたのが特徴です。専用庭のある1階の居室以外は、そのクロゼット内にデスクを設け、ワークスペースとして使えるようにしました。クロゼットは独立した1室となっているため、2人暮らしの場合には、ちょっとした自分の時間を確保する空間としても使えます。
DK/LDKと洋室が隣り合う間取りは、洋室の扉を開放すれば広いワンルームにもなります。今回は、暮らす人のライフスタイルによって「DK/LDK:洋室:ウォークイン」の求められている割合の違いを追求すべく、C~Fの4パターンの間取りを作りました。また、1階住戸のA・Bタイプにはテラスを設けました。
Ctype 1LDK+WIC 専有面積/30.60㎡
リビングを重視する生活ができるように、洋室はダブルベッドがピッタリ収まる広さにして、LDKを広げています。ウォークインクロゼットには洋室側から入る間取りが一般的ですが、入口を別にすることで洋室内に余分な空間を設けなくても済むようにしました。
Dtype 1DK+WIC 専有面積/30.59㎡
洋室はダブルベッドが収まる広さにし、ウォークインクロゼットを最大限広くした部屋です。さらにウォークインクロゼットに室内窓を設けたことで、収納というよりも居室として利用できる空間に設えました。このタイプが一番人気で、特に2人暮らしの方に選ばれています。
Etype 1DK+WIC 専有面積/28.21㎡
DKはできるだけスッキリさせたい方向けに、洋室を広く取り、ベッド以外のものも置けるスペースを確保しています。その分クロゼットは狭くなっていますが、クロゼット内にデスクも設置しています。
Ftype 1DK+WIC 専有面積/26.46㎡
一番コンパクトな部屋です。DK、洋室、ウォークインクロゼットそれぞれを平均的な割合で作っています。
DKや収納を充実させた分、そのほかの水回りなどはコンパクトにまとめています。そうする中でも、キッチンは2人暮らしのことを考えて2口コンロを設置するなど、優先すべきところとそうでないところの調整を工夫しました。
想定したお客様像に合わせた間取りをいくつか用意したことで、お客様にはより自分の暮らしに合った部屋を選んでいただけると思います。同時に、どのパターンの部屋をどういった方が選ばれたのかは今後の部屋作りの参考にしたいと考えています。
持たない暮らしの伝え方
こだわったモノづくりをしても、デュオメゾン池袋は賃貸物件のため、私たちが直接お客様に接してその魅力を伝えることができません。特に本物件の特徴でもあるIOTは、既存の不動産ポータルサイトには対応する項目がなく、お客様や仲介会社へどのように伝えるのかが課題でした。
そこでIOTのある暮らしを中心に、物件の特徴をぎゅっと短くまとめた動画を作成しました。仲介会社にはそれをお客様に見せてくださいとお願いしています。モデルルームにはその動画の視聴やIOTのアプリを操作できるiPadと、声掛けで照明やエアコンの操作ができるAlexaを置き、実際の生活を少し体験していただけるようにしました。
現在までに入居を決めてくださった方は、IOTに関心のある方やテレワークの多い方、若いカップルなど、当初想定したような方と概ね一致しています。駅からの距離がネックでしたが、持たない暮らしという提案をすることで、暮らしの新しい選択肢を生むことができたのではないかと感じています。
私たちの手掛ける賃貸物件は今回のように10数戸の規模が多いため、作るサイクルも早いです。サイクルが早いため、チャレンジの結果が出るのも振り返りも素早くできるのが利点だと思っています。デュオメゾン池袋で得られたことも、早速今後のモノづくりに生かしていきたいです。
デュオメゾン池袋
https://www.duo-maison.jp/ikebukuro/
所在地:豊島区池袋四丁目9ー3
交通:JR「池袋」駅C6出口より徒歩10分
総戸数:14戸
階数:4階建て
竣工:2023年3月