特性を活かして新しい価値を創る
「デュオヒルズ戸塚」

【フージャースの建築めぐり】建築担当の裏話編

「フージャースの建築めぐり」シリーズの「建築担当の裏話編」では、作り手のこだわりや苦労した点など、広告やパンフレットでは知ることができない裏話に迫ります。フージャースのモノづくりに対するこだわりの姿勢を、感じていただけるかと思います。

戸塚駅から徒歩11分に位置するDuo Hills(デュオヒルズ)戸塚。この場所には、丘の上、南側に斜面、という土地の特性がありました。それらを活かしたモノづくりのこだわりについて、担当者が語ります。

建築担当の紹介
フージャースコーポレーション
建築部 山下 愛子(やました あいこ)

本プロジェクトは、「空と暮らす、緑と暮らす -四季に包まれる暮らし-」をキーワードとして始まりました。高台にあるため低層階でも見晴らしが良い東側を「Sky View」、傾斜地に面する南側を「Green View」とする2棟構成で、この土地の特性を生かした住まいづくりをしています。



目指したのは「丘の上の美術館」

横浜まで直通9分、4路線利用できる交通アクセスの良い戸塚ですが、今回の物件が建つのは駅からアップダウンのある道を行った先の高台でした。外観はこの地に建つインパクトのある建物になってほしいとの想いから、「丘の上の美術館」をイメージして作っています。住宅としての温かさを出しながらも、坂を登った先に佇む邸宅としてのカッコ良さを追求しました。特にこだわったのは、物件前の坂から見上げた時に目に入る姿です。
通常、マンションの外壁にはタイルを貼って高級感を出したり、目地の加工や張り分けによって柔らかさなどを出したりすることが多いのですが、この物件には1枚もタイルを使っていません。ナチュラルな木目模様を付けたコンクリートを使って、パリッとしたカッコ良さを出しつつ、周りの自然と調和する外観を生み出しました。また、東側のバルコニーの上裏は木目調にして暖かみを出しています。コーナーの壁はガラス張りにして、空や緑を映し出すようにしました。
この下から見上げた時の外観パースを、ホームページのトップやチラシなどの販促物に使っていたのですが、その外観に惹かれて見にきたというお客様もいらっしゃいました。

建物に入ってからの風景にもこだわっています。エントランスを入ってすぐのところには、「オープンエアラウンジ」と称した一面ガラス張りのスペースを設けました。ガラス越しに広がる豊かな植栽から自然を感じられ、さらにその先の開けた風景も観られる開放的なラウンジです。外に植える植栽は、このラウンジに入る木漏れ日や影の映りを考えて、葉の数や枝の形をデザイナーと検討しながら選びました。

オープンエアラウンジの先には、「ケイブエントランス」があります。ケイブ(cave)とは洞窟を意味します。ここに暮らす人だけが味わえる特別なスペースも作りたいと思って設けたスペースです。光に溢れるオープンエアラウンジから雰囲気は一変し、洞窟をイメージした重厚感のある空間にすることで、オンとオフの切り替えを促せるようにしています。自然を切り取ったようなデザインを意識し、壁や床には岩や石を想起させるタイルを使い、大樹を予感させる木の造作ベンチを設けました。

 

空と緑と暮らす住まいの提案

「緑と暮らす」を体現したものとして特徴的なのが、南側のバルコニー側に設けたグリーンウォールです。ここには元々目の前の斜面を支える擁壁(斜面の土の崩れを防ぐ壁状の構造物)がありました。この擁壁をそのままにしておく選択肢もありましたが、決してキレイとは言えない既存の壁に向かって暮らすのは、ここに住む方にとってベストではないと思いました。ここで暮らすからこその価値を作れないかと考えて採用したのがグリーンウォールです。既存の擁壁の前に新しい壁を設置して緑をあしらい、その上の斜面にも植栽を植え、常に緑を眺められる暮らしを提供することにしました。

新たに壁を設置するにはコストもかかりますし、継続的なメンテナンスも必要となります。ほかにも、虫が増えるのではないか、地震の時にプランターが落ちてくるのでは無いかというお客様からの声も想像できます。そうした負担や懸念を考えると、既存の壁のままでいいのではという議論もありましたが、グリーンウォールを設置することで得られる部屋からの眺望や、自然との暮らしを感じる日常を、この物件の価値にしたいという想いで、このグリーンウォールの完成を目指しました。実際に見たお客様からは「グリーンウォールがあって良かったよね」と口を揃えて仰っていただき、この企画をやって良かったと感じています。

緑がある事で不安になる事柄を減らしながら暮らしをより楽しんで頂けるように、メンテナンス面の負担軽減や、植える植栽の種類は慎重に選びました。壁は北に向いているので日陰に強い植物であったり、鳥が集まらないように実のならないものであったり、いくつか制約がある中で最大限お客様に楽しんでいただけるような植栽を選んでいます。季節ごとに色の変わるカラーリーフや花を植え、1年を通して彩り豊かな壁を実現しました。お客様が懸念される虫への対策としては、防虫スプレーの使用という基本的なことや、初めから蜜の少ない花を選んだり、計画していた夜間の照明を無くしたりしました。安全面に対しても、プランターはボルトでしっかり留めているのはもちろん、ほかの物件の事例も紹介して、お客様が安心できるように細かな質問にも丁寧に説明できるように準備しました。

グリーンウォールを作るにあたって、もう一つ新しい暮らしの提案をしたものがあります。それが「Re:Room」(リ・ルーム)です。バルコニーの一角に位置するようなこの部屋は、室内でありながら半分室外のような中間領域として、 Refresh・Relax・ RecreationなどさまざまなReができる空間です。グリーンウォールを設けるなら、その緑を眺めながらそれぞれのReを叶える部屋を作ろうと追加で計画しました。ちょうどコロナ禍での販売だったため、Remoteワークのための空間としての提案でもあります。

Re:Roomのある物件は東川口・桂川に続いてこれで3物件目なのですが、それまでの2物件では完成予想図でお客様に伝えていましたが、この戸塚では初めて写真のようなRe:Roomのあるモデルルームを作りました。緑を見ながら仕事をしたり家事をしたりという暮らしをお客様に伝えやすく、体感もしていただきやすいモデルルームになったと思います。

「空と暮らす」を体現したのが東棟です。丘の上に建っているため2階でも他のマンションの5階相当の高さがあり、壮大な眺望と開放感を感じられます。空や景色がキレイに見えるよう、バルコニーには上部に向かって透明になるグラデーションをかけたガラス手すりを採用しました。そのグラデーションも通常は2/3程度から透けるようにするものを、ここでは1/2程度から透け感が出るようにしています。

 

人にも土地にも合わせたモノづくり

ほかにも、お客様の暮らしを考えて当初の予定から変更したものがあります。駐輪場は戸数分用意していたのですが、途中で1.5倍の台数まで増やすことにしました。駅からすぐの立地ではないので自転車を利用される方が多いと予想されたのと、坂道が多いので特に電動自転車が多くなるだろうと考えたため、電動自転車も置きやすい平置きの駐輪場を増やしました。結果、駐輪場はほとんど埋まったので、変更して良かったと思っています。
こうして住む方のことを考えながら、土地の特性を最大限活かしたモノづくりができたという自負はあったものの、実際にお客様に価値を感じてもらえるかどうかは正直心配なところもありました。内覧会の際には急な坂道を、ベビーカーを押して上ってくる来るお客様もいらっしゃって、息を弾ませている姿を目にしました。丘の上にある宿命とはいえ、この住まいにそれを越える価値がないと満足していただけないだろうと内心ヒヤヒヤしたものです。そんな私の心配をよそにお客様の満足度は高く、「完成予想図通りで感動しました」「思っていたよりもさらに良かったです」という声が聞かれたので、とても安心しました。訪れたお子さんがオープンエアラウンジやケイブエントランスに入って喜んでいる姿を見て、思わず涙が出そうになりました。
フージャースではその土地に合わせたモノづくりは当たり前のことですが、今回はより一層土地の特性を活かしたモノづくりができた物件だと感じています。

 

デュオヒルズ戸塚
※こちらの物件は完売しました

所在地:横浜市戸塚区矢部町
交通:​​JR「戸塚」駅より徒歩11分、横浜市営地下鉄ブルーライン「戸塚」駅より徒歩11分
総戸数:46戸
階数:6階建て
竣工:2023年3月