決まりがあっても追求すべきは変わらない
「デュオヒルズ京都桂川」
【フージャースの建築めぐり】建築担当の裏話編
「フージャースの建築めぐり」シリーズの「建築担当の裏話編」では、作り手のこだわりや苦労した点など、広告やパンフレットでは知ることができない裏話に迫ります。フージャースのモノづくりに対するこだわりの姿勢を、感じていただけるかと思います。
人に、場所に、時代に合わせたモノづくり
再開発により発展し、都心へのアクセスも良い桂川。京都の西の玄関口とも呼ばれるその街に建つのが、Duo Hills(デュオヒルズ)京都桂川です。この物件では、京都の建物に関する制約とコロナ禍での暮らし方にも配慮したモノづくりをしています。そのポイントを担当者が語ります。
建築担当者の紹介
建築本部 高嶋 啓喜(たかしま ひろき)
本物件は、京都ならではの建物に関する規制と、コロナ禍での生活という2つの課題がありました。その中でいかにお客様の欲しい暮らしを実現するか、お客様に喜んでいただけることを追求したモノづくりをしています。
子どもにも大人にも嬉しい場づくり
JR京都線「桂川」駅から徒歩8分に位置するデュオヒルズ京都桂川。JR京都駅まで5分、JR大阪駅まで直通35分と都心へのアクセスが良く、駅前には駅直結の京都府最大のイオンモールもある利便性の高い場所です。JR京都線沿線は、大手企業の本社が多くあります。そうした企業へ勤め、いずれ子どもが欲しいと考えているような30代の夫婦の、現在と未来の暮らし方を想定した住まいづくりをしました。
交通アクセスの良い場所である一方、2つの幹線道路が交わる角地のため、敷地内でしっかり緑を感じられるよう、空いているところは全て緑にしたと言っても過言でないくらい植栽を豊富に取り入れています。敷地内でお子さんを安心して遊ばせられるよう、屋上にはテラスを設けました。ここは、子どものためだけではなく大人の方のためにも作りたい空間でした。今後、家で仕事をする方が増えると想定し、在宅ワークの合間にリラックスできるような場を設けたかったのです。視界を遮るものがなく、五山の送り火も見える見晴らしのいい場所で、快適な時間を過ごしていただければと思います。
芝生と樹脂製のウッドデッキが広がる屋上テラスですが、床の素材はデザイナーとも何度も意見交換した箇所です。元々のデザインでは、ウッドデッキにも本物の木を使う案が上がっていました。本物の木には代えがたい良さがありますが、最終的な判断は住む方にとってどうかという点で決めました。自然の木を使用することで懸念されたのが、小さなお子さんが裸足で歩いた時に、木のささくれやトゲで怪我をするかもしれないということでした。それが本物の木材の良さでもありますが、お住まいになられた方が安心して利用頂けることと、中長期的なメンテナンス面を考慮して、最後は樹脂製のものを採用することにしました。樹脂製のウッドデッキは、日差しによって熱くなりすぎることが心配されましたが、本物の木と温度の上昇率が変わらない検証がされている材質を、選ぶことで解決しています。
規制の中にも細かなこだわりを重ねて
外観の色彩計画の制限が、京都市の条例によって定められています。その決まりを守りながら、細かなこだわりや調整を重ねて、バランスの取れたデザインに仕上げました
土地の形状に合わせ、建物全体はL字型になっています。外観で特徴的なのは、西側の最上階のガラス庇と、L字型の角を生かしたガラスのコーナーサッシです。庇やサッシのガラス部分を上手く収めるのに苦労しましたが、複数のガラスの連なりはモダンな雰囲気をもたらしてくれます。外観だけでなく、開放感のある室内空間も生み出せました。
マンションに入るとき1番目に入るのは、アプローチ側の側面です。マンションの顔ともいうべきこの面には、竪樋(たてどい:雨を地上に運ぶために縦に走る筒状のもの)を壁面に出さざるを得なかったのですが、そのままだとせっかくの雰囲気を邪魔してしまうと思いました。そこで竪樋をアルミの角状の樋に変え、全体の雰囲気を壊さないようなデザインにしています。
ゆるやかに温かくお出迎え
先述した通り、このマンションはL字型となっています。L字型からさらに一部飛び出た形状を活かし、エントランスまで長い引きをとり路地の様な(道路からエントランスまでの十分な奥行きを設ける)空間を演出しました。ここを通るたびに季節の移り変わりを感じて頂ける空間、日々の生活の中でオンオフを切り替えられる様な空間を目指しました。京都市内では長い引きのある建物はあまり見られません。内覧会の際にはここに立って写真を撮られる方も多く、お客様にも喜んでいただけました。
このアプローチの入り口の壁もこだわりの部分です。セキュリティではありませんが、守られ感のある高さとし、白壁の中ほどに横スリットを入れ、マンションの中の光が外に漏れ出るような作りにしています。幹線道路が交わる角地だからこそ、スリットから漏れ出る光は安心感を与えるものとして欠かせないと考えました。一見シンプルな作りですが、光が漏れ出る形とデザイン性、壁としての耐久性のバランスを取るのが難しく、現場で実際に見て調整しています。スリット部の黒い壁は、上の白い壁が浮いて見えるように、現場ではミリ単位で削ってもらいました。
アプローチの先、風除室を抜けたところにあるエントランスホールの入り口には、黒い自動ドアがあります。インターホンはこの横の壁に埋め込むか、自立型のものを置くことが一般的ですが、自動ドアの枠と一体型にしてすっきりさせました。
自動ドアにもひと工夫してあります。京都市の建物の高さ制限によって階高が低いため、圧迫感が出ないよう、自動ドアのエンジン装置を天井に埋め込んでいます。
アプローチの先、風除室を抜けたところにあるエントランスホールは、外から見るとディスプレイになるくらい作り込みました。外の喧騒から離れた、静かな落ち着きのある空間にしています。
壁は、大きな一枚のガラスに見えるよう、金物などを入れずガラスを繋ぎ合わせました。そのガラス越しに見えるのがアプローチの植栽です。京都ということで、どこかしら落ち着きのある和のテイストを入れたいと思い、黒竹を植えています。
この広々とした空間を分断しないよう、ホールの柱には鏡を貼り付けました。鏡に空間が反射することによって外の景色と馴染み、柱の存在感を感じさせません。
ラウンジの壁一面には大きな大理石が貼ってあります。世に一つとして同じものがない模様の大理石です。この空間に相応しいのはどういう模様か、どういった組み合わせ方がいいのか、デザイナーと一つ一つ実際の石材を見ながら考え決めた唯一無二の壁になりました。
このほかに、地域の企業とタイアップしたデザインやインテリアを採用しています。
例えば、書棚にも細かいこだわりが詰まっています。各棚の上部に設置した光源を隠すように仕上げ、桂川のきらめきを表現したガラスアートを入れています。このガラスアートは、京都の陶額堂というところの職人さんがひとつ一つ作ったものです。このアートが生きるよう、後ろに入れる照明は、実際にガラスに光を当てて、一番良い光の出方を検討しました。
また、本を並べている飾り棚には、京都の老舗図書館用品メーカー規文堂が作り出したお洒落で機能的なブックスタンドが使われています。桂川駅の一つ手前の西大路駅近くに本社があります。巷のショップにはほとんど卸していない商品ですが、本社に行くと小売もしてくれます。本好きには、知られざる逸品でもあります。
本プロジェクトは、京都市の条例という制限がある中でのモノづくりでしたが、その分やりがいがあったと感じています。
デュオヒルズ京都桂川
※こちらの物件は完売しました
所在地:京都府京都市南区久世町
交通:JR京都線「桂川」駅より徒歩8分
総戸数:96戸
階数:7階建て
竣工:2023年2月
ガラスアート
株式会社 陶額堂
http://www.togakudo.co.jp/index.html
ブックスタンド
株式会社 規文堂
https://www.kibundo.co.jp/
https://kibundo.stores.jp/