街も一緒に作る、シニア向け分譲マンション
「デュオセーヌ横浜川和町ガーデン」
【フージャースの建築めぐり】建築担当の裏話編
「フージャースの建築めぐり」シリーズの「建築担当の裏話編」では、作り手のこだわりや苦労した点など、広告やパンフレットでは知ることができない裏話に迫ります。フージャースのモノづくりに対するこだわりの姿勢を、感じていただけるかと思います。
これからの街づくりも考えたモノづくり
「DUO SCENE(デュオセーヌ)横浜川和町ガーデン」は、横浜市営地下鉄グリーンライン「川和町」駅まで徒歩5分のところに位置するシニア向けの分譲マンションです。物件そのものだけでなく、周辺一帯と街として魅力を持たせられるような工夫をしました。そのポイントを物件担当者が語ります。
建築担当者の紹介
建築本部 宮部 貴寛(みやべ たかひろ)
この土地に合ったものはなにか、今まで継承してきた中でいいものはなにか、新しく取り入れた方がいいものはなにか、を考えながらモノづくりをしました。
マンションを作り、街も作る
デュオセーヌは、フージャースが2013年から始めたシニア向け分譲マンション事業です。バリアフリーなど高齢者施設に取り入れられる要素を導入した上で、高齢者の方々が“欲しかった暮らし”を実現するために、独自の工夫を施しています。
デュオセーヌについては、「高齢者の欲しかった暮らしをカタチに『シニア向け分譲マンションDUO SCENEデュオセーヌ』」(2023年4月14日掲載)で紹介しています。
デュオセーヌ横浜川和町ガーデンは、横浜市営地下鉄グリーンライン川和町駅まで徒歩5分と駅に近く、センター南駅まで電車で4分というアクセスの良い立地です。交通の便はいいものの、周辺の大規模開発の一角に位置し、街づくりが行われるのはこれから。本物件の計画当初は、周りにまだ何もない土地でした。マンション自体を魅力ある住まいにすることはもちろん、周辺一帯を川和町開発街区として、魅力的な場所にすることが必要だと思いました。
三菱地所と協力した道作り
魅力的な街づくりをするため、周辺の大規模マンションを担当している三菱地所と協力をしています。一つ目が、マンション西側のカツラ並木です。本物件の西側にある道路は、街で一番人通りが多いメイン通路になる道でした。それぞれの会社毎にモノづくりを行うのではなく、ひと繋がりの緑道にしようと考え、三菱地所の担当者と話し合い、同じ樹木を並べて植えることで一体感のある街路にしました。並木道は、センター南駅のカツラ並木を参考とし選定しました。また、街路のインターロッキングは同一街区内で色見を合わせ、統一感のある街並みを形成するデザインとしています。
二つ目は各街区の交差点に位置するシンボルツリーを、花が咲く時期が異なる樹種を選定し四季を感じられるようにしたことです。北西側の本物件はシンボルツリーとして、カツラの他に夏に花が咲くヤマボウシを計画、南西側街区(三菱地所の街区)には春に花が咲く山桜、北東側街区(三菱地所の街区)には秋に紅葉する山紅葉を植える計画しました。
外とつながる程よい距離感
3街区の中心に位置する本物件北西側にはレストランとガーデンを配しました。レストランは外部利用を想定し、ガーデンは入居者の憩いのスペースの他、コロナ対策として密にならない外部での運動スペース(ラジオ体操など)としての利用を想定しています。また、ガーデンを介してベンチ等でくつろいでいる入居者と、テイクアウトでコーヒーを買った子どもづれの家族が、ふとした時に自然な交流がうまれる場を目指しました。
こうした場づくりやレストランを外部に開放する上で気をつけたのは、程よい開き具合にすることでした。もっとオープンな作りにすることも可能でしたが、レストランやマンションの敷地内に誰もが簡単に入れることは、入居者にとってベストなことではありません。レストランは外部の方にも認知されやすく入りやすい作りにする一方、そこに隣接した入居者が簡単な運動もできるガーデンへの入口はあえて狭くして、ゆるやかに動線を区別しています。
共有部での新しい試み
大浴場があるのもデュオセーヌシリーズの特徴です。今回は新しいことにチャレンジしようと考え、通常の内湯のほかに、外気浴ができる半露天のような浴槽を設けました。露天風呂にすることも可能でしたが、かなりのコストがかかり、物件の価格にも影響を与えてしまいます。コストを抑えながら、自然や風を感じられる造りを考えました。
デュオセーヌの第二のリビングでもあるラウンジは、入居者の方がそこで行う趣味なども考えて空間作りをしています。これまでの物件より戸数が少ないため、ラウンジの広さは決して十分だったわけではありません。少しでも広く感じられるよう、なるべく壁を作らないようにしたり、コンパクトにしても支障がない部分は圧縮したりするなど工夫しました。
今回の物件で初めて取り入れたのが、ミニコンビニです。今は、ドリンクやお菓子を中心に扱っていますが、ゆくゆくは販売する商品の見直しを行い、重いものも取り扱います。ショッピングセンターには少し距離があるため、重たい水やお米を外で買って持って帰ってくるのはとても大変です。その負担を少しでも軽減するために、販売商品を選定し変更できるミニストップのミニコンビニを採用実施しました。
お客様の声を元にブラッシュアップ
今回の物件を考えるにあたって、どういった間取りがいいか、どういった住宅に住みたいか、これまでのデュオセーヌの居住者にアンケートをとったり、物件に興味を持った方との座談会を開いたりしました。そこで聞かれた声を取り入れたのが、シューズインクロゼットです。アンケートや座談会から、もっと収納力が欲しいという声が聞かれ、シューズインクロゼットに靴以外のものも置いていることもわかりました。そこで、クロゼット内を左右に仕切る壁を設け、可動式の棚にすることで、高さの違うものを収納しやすくしています。また、これまでの物件を見に行かせてもらう中で、クロゼットの入口に突っ張り棒やロールスクリーンをつけて目隠しをしている方も少なくなかったので、あらかじめロールスクリーンを設置できる下地を付けることにしました。
アクティブシニアの住まいの課題は、これからますます顕在化していく社会課題です。私たちはデュオセーヌを通じて、今まで以上に生活者の目線に立ち、暮らしやすい住まいは何かを考え、高齢という社会課題を少しでも緩和していく必要があると考えています。
共有部に関しては、引き続きブラッシュアップしていく必要があり、毎月1件ずつ既存のデュオセーヌ物件を訪れ、現場の運営の方の声を聞いています。そこで聞かれた声をモノづくりに反映させていくことも検討しています。そして、災害の多い日本だからこそ、高齢者が安心して暮らせるように、防災対策にももっと力を入れなければならないと考えています。
また、IOT化も一つの課題です。高齢者が苦手な分野ではなく、高齢者だから使いやすく安心できるIOT化を目指しています。
今後も良いものは残し、新しいことも取り入れながら、その場所に合ったモノづくりをしていきたいと思います。
デュオセーヌ横浜川和町ガーデン
https://www.duoscene.jp/kawawa/
所在地:神奈川県横浜市都筑区川和町
交通:横浜市営地下鉄グリーンライン「川和町」駅まで徒歩5分
総戸数:149戸
階数:10階建て
竣工:2023年12月