この先もずっと、使われる共用部へ
【フージャースの考えるコミュニティ】
私たちフージャースには、「こころ躍る、コミュニティ室」(以下、ここコミ室)という部署があります。2011年の東日本大震災を機に、コミュニティ形成が共同住宅の重要な価値となると考えて立ち上げました。ソフトとハードの両面から皆さんの欲しかった暮らしを叶えるための活動をしています。
例えばソフト面では、居住者の皆さんの「程よい距離感」の構築を目指した「ご近所Sunday」というイベントを2022年から始めました。今年はハード面から、既存のマンションの共用部に対する新たなチャレンジをしています。
担当者の紹介
フージャースコーポレーション こころ躍る、コミュニティ室
大東 絵理子(だいとう えりこ)
どうすれば共用部が使われ、ゆるやかなコミュニティの形成につながっていくのか、お住まいの皆さんの暮らしに寄り添う形を考えました。
フージャースリビングサービス フロント
勝藤 千晶 (かつふじ ちあき)
デベロッパーであるフージャースと管理会社、居住者の皆さんとのパイプ役を務め、皆さんの負担なく共用部が活用されるようにサポートしました。
今ここコミ室では、マンションの経年する共用部の改善に取り組んでいます。この取り組みの大前提となっているのが「使われる共用部」という考えです。
使われる共用部があれば、そこに滞在する時間が増え、顔見知りが増えていきます。顔を合わせる機会が増えていくことで、徐々に挨拶をする関係、話をする関係になり、自然とコミュニティが育まれていきます。そんなゆるやかな関係性を築いていただくために、マンションの販売時には共用部での「暮らしの提案」もしていますが、月日が経ってもその提案が機能しているかどうかは積極的に調べないとわかりません。
販売から数年経ったマンションの共用部の使われ方を調査し、必要ならデベロッパーである我々もともに改善し、より滞在したくなるような空間作りをしたいという想いから、今回の取り組みをスタートさせました。
親子が集う、毎日使える共用部
まず始めに取り掛かったのが、2019年に竣工したファミリーマンション「デュオヒルズ西大宮ザ・グランテラス」です。ここはちょうど居住者の皆さんから共用部をもっと使えるようにしたいという声が挙がっていた物件だったので、それに応える形で管理会社とも協力して形にしていきました。
連続した部屋が2つある共用部は、事前予約をしないと使えない空間ということもあり、月数回の貸切りの利用があるだけになっていました。そこで、皆さんがどのように使いたいのか意見を伺ってみました。すると、子育て世帯の多いマンションということで、ロビーには小学生がよく集まって遊んでいますが、「未就学児も安心して過ごせるような場所があるといい」という声が聞かれました。そこで、片方の部屋にマットを敷き、家に置けないような大きめのおもちゃなどを置いてキッズスペースを作ることにしました。新たに利用に関するルールも設け、時間を決めて毎日開放しています。幼稚園のバスが帰ってきてから夕飯までの時間などに利用されているようで、利用率は以前の何倍にもなりました。
共用部の利用を細く長く続ける秘訣
「デュオヒルズ西大宮ザ・グランテラス」は居住者の方からのリクエストに寄り添う形で実現した例でしたが、それとは別の形で共用部の再活用を目指したのが、竣工から今年で10年目を迎えた「デュオヒルズ戸田公園リヴァリーゼ」です。
「PLAY BEAUTY」をテーマにしたマンションで、壁1面が鏡張りになっているヒルズ・サロンという多目的ルームがあります。竣工から2年間はネイルやバスボム作りのセミナー、ヨガ教室など、居住者の方が無料で参加できるイベント「キレイ応援プログラム」をデベロッパーからのプレゼントとして開催していました。開催は皆さんに喜んでいただいていましたが、プレゼント期間の2年が終わった後は定期的に開催される管理組合の会議(理事会や総会)や貸切利用で月に数回使用される程度となり、ほとんど活用されなくなってしまいました。
この空間をまた活用いただきたいと思い、居住者の皆さんにアンケートを取り、理事会とも意見交換をし、再び活用をすることを決めました。元々運動をすることに馴染みのある空間であったことと、以前やっていたようなことをまたやりたいという声もあったので、ヨガ教室を長く継続できる形で開催することにしました。
この取り組みをする上で重視したのは、これから先も継続してできることと、デベロッパーが関与しなくても自走できる形にすることです。マンションの運営は基本的に理事会の役員の皆さんが決めて動きますが、毎年入れ替わりがありますし、負担がかかる形だと長続きしません。また、現場で勤務する管理員の方への負担が大きくても続かないので、皆さんの関わりをどうやって減らすのかが大きな課題でした。そこで考えたのが、地域のヨガの先生をお呼びし場所の提供をする代わりに、集客や申し込み対応などを先生自身に行っていただく方法です。先生の負担が増えすぎてもいけないので、集客用のチラシは最初にこちらで作成してフォーマットをお渡しするなど、なるべく作業を減らす工夫をしています。
ヨガ教室は2024年7月から実施し、今も月2回の開催が続いています。毎月の参加者は5~8名で、今後人数を増やしていきたいと思っていますが、先生・管理員・理事会・居住者の全員に負担がかからないこと、とにかく細く長く続けることが一番大切です。先生も前向きで更なる改善の提案をいただいたり、管理会社とも相談したりしながら現在まで良い形で進められているので、このまま継続を第一に進めたいと思っています。
グループとして暮らしをサポート
あくまでもマンションは居住者の方々の持ち物なので、共用部もそこに住む皆さんで考えて使っていただくのが良いのですが、居住者のどなたかが積極的に関わって実行するには大変な労力がかかります。そのため、今回はこのような取り組みを始めました。居住者の方に負担のない方法を考える上で、管理会社と常に情報共有をして、その方法を一つ一つ相談できたことも、グループとしての強みを改めて実感しました。
居住者の皆さんが共用部を少しずつでも継続して活用することで、ゆるやかなコミュニティが徐々に育まれていくはずです。
今後ほかのマンションでも取り組み「使われる共用部」を増やしていくのはもちろん、問題をしっかり把握して改善することを通して、今後のマンション作りに生かしていきたいと思っています。