トイレ空間の可能性に関する座談会を終えて

Wakko / PIXTA(ピクスタ)

私達の暮らしになくてはならないトイレ。近年、トイレは「温水洗浄便座」のほか、「自動脱臭機能」や「抗菌機能」「人を感知すると自動でフタが開く機能」「トイレの自動洗浄機能」など、衛生的な機能も次々と開発され進化しています。
一方、コロナ禍の家で過ごす時間が増えた時には、一人になりたくてトイレに篭るという事も耳にしました。また、トイレという小さな空間が落ち着くという人や、マンガを読んだり、スマホを見たりと、用を足す以外の使い方をする人も多いと思います。
フージャースでは、トイレの価値やトイレに求めることなど、トイレ空間について、住宅設備メーカーと共同で調査をすることになりました。
トイレの多重利用(他の用途でも利用)の可能性を探るため、トイレに対する価値観や現状を探るアンケートを実施しました。アンケートの結果は、欲しかった暮らしラボにて「【結果】トイレ空間の可能性に関するアンケート」で報告しています。(20231222日掲載)

アンケートでは、トイレ空間で行うことへの抵抗感があること、抵抗感がないことが見えてきました。
これらの結果を踏まえて、112日から計5回にわたって行った「トイレ空間の可能性に関する座談会」の内容を紹介します。

 

座談会の目的
「用を足す」目的のトイレとしては、現状のトイレに満足している方が多い。用を足しながら、あるいは用を足す以外にトイレですることとしては、「メールやSNSをチェックする」「気持ちを落ち着かせる」の回答する方が多かった。
「用を足す」という行為をする場所として限定されているトイレ空間ですが、「用を足す」以外でも空間を利用できないか、その可能性を探るために皆様のご意見を伺いたい。

実施日
2024112()16()18()24()2回の計5回

参加者
30代~60代の女性、計10

結果の要約
トイレで用を足す以外にすることは、アンケートと同様に「メールやSNSをチェックする」など、スマートフォンを操作する方が多くいらっしゃいました。トイレは落ち着くと思っている方も多く、特に小さいお子さんがいる方はトイレだけが1人になれる空間・時間だと回答されています。
一方、衛生面からトイレに何かを持ち込むのは嫌だという方もいらっしゃいました。

トイレであっても寛げると思える空間を伺うと、便器のほかにデスクと椅子があり、その間が壁で区切られている形が支持されました。同じ空間にありがならも便器が見えない場所にあることで、便器の存在や衛生面がある程度気にならなくなるようです。
普段お使いのトイレに近いトイレ空間を選ばれる方もいらっしゃいました。トイレが落ち着く空間であるためには、一定の閉塞感も重要で、広すぎると逆に落ち着かなくなってしまうようです。

トイレ空間の設備では、ちょっとしたものを置けるカウンターや、それに小さな収納がある仕様が人気でした。足元から天井まであるような大きな収納は、あまり求められていないようです。
カウンターには落ち着けるような明かりや香り、自分の好きなものを置きたいという意見が聞かれました。

トイレの位置はリビングやダイニングなど、人が集まったり食事に関係したりする場所から離れたところが良いという声が多く聞かれました。手を洗うのはトイレタンクにある手洗い器ではなく、洗面所で洗う方も多いため、洗面所の近くが理想の位置に挙がりました。
トイレタンクの手洗い器は、出てくる水が綺麗ではないというイメージを持っている方がほとんどでした。ほかにも、手洗い器には石鹸が置けなかったり、水が飛んでしまったりするので使わないという声も聞かれました。

座談会を終えて
トイレは用を足す以外に、1人になれる場所、落ち着ける場所であることが改めてわかりました。落ち着くためには、程よい狭さも必要で、開放感がありすぎると落ち着けなくなってしまうようです。
そういう意味では皆さん現状のトイレに満足はしているものの、オシャレなものやお気に入りのものを飾ることへの憧れはお持ちのようでした。

今回の座談会で強く感じたのは、衛生面に対する意識の高さです。トイレにものを持ち込みたくないという方も一定数おられ、トイレの後はしっかり手を洗いたい、石鹸で手を洗いたいという方がほとんどでした。
トイレタンクにある手洗い器を使っている方が少なく、使っていても洗面所で再び手を洗う方も多くいらっしゃいます。実際はそうでは無いとわかっていても、手洗い器の水は綺麗ではないというイメージを持っている方が多いのが印象的でした。興味深かったのは、特に女性がそう感じているということです。今回の参加者は皆さん女性で、手洗い器だけで手洗いを済ませる方は少数でしたが、男性はタンクの手洗い器で洗っているというご家庭もありました。推測ではありますが、手洗い器へのイメージや使用には男女差があるのかもしれません。

衛生面の意識は非常に高く清掃性を重視するものの、一方では機能重視で無機質になりすぎているトイレ空間を、落ち着く空間にしたいとか、好きな小物を置きたいとか、癒しを求める声も上がっています。
衛生的に利用できること、居心地の良い癒しの空間であることの2軸から、トイレ空間の改善に対する課題はありそうです。今回の結果を参考にしながら、今後もトイレ空間の可能性を考えていきたいと思います。