乾物を用意する
皆さんのお宅には、常備している乾物がありますか?大根や豆腐、豆やワカメに魚など、様々な種類の乾物が日本にはあります。乾物は、冷蔵庫がなかった時代、旬の食べ物を少しでも長く美味しく食べようとする、暮らしの知恵です。生だったら腐ってしまうところ、乾物なら長持ちしますし、軽いので持ち運びも楽です。
他の国を見ても、ここまで豊富な種類の乾物を有する国は、日本と中国、韓国ぐらいでしょう。
厳しい気候だからできる乾物
全国で生産される乾物ですが、中でも寒天は約85%が長野県で作られています。生産量もですが、海のない場所で、海藻を使った寒天が作られていることも不思議です。
寒天の作り方は非常にシンプルで、海藻を煮て固めてできたトコロテン状態のものを、夜間に凍結させて、日中は溶かして水分を飛ばし、ゆっくり乾燥させて作られます。この作業を屋外で何日も続けます。そのため、夜の冷え込みが激しい一方で、日中は晴天が多く、風が吹かない場所でしか生産することができません。この気候の制約から、日本で最も晴天率が高い長野県(特に諏訪地域)で寒天は作られてきました。この他にも同様の気候条件のため、岐阜県でも寒天作りは行われています。
寒天が作られるようになったのは、江戸時代初期のこと。
参勤交代の道すがら食べ残したトコロテンを外に置いていたところ、寒さで凍結した後に乾燥した、乾いたトコロテンを発見しました。この乾燥したトコロテンを再び水で戻したところ、元の物よりも美しく、海藻臭さがない美味しいものができました。これが乾燥トコロテン、つまりは寒天の誕生です。
時代は進み、江戸時代末期。信州の行商人小林粂左衛門は、この乾燥トコロテンに目をつけます。冬は農家が閑散期に入りますから、海藻さえ手に入れば、農家の副業として広がるはず。気候の条件も揃っているので、もっと美味しく作れるはずと。そこで伊豆から海藻を仕入れるルートを作り、閑散期の農家の副業として長野県で寒天産業を発展させていきました。
長野県では、現代に至るまで、この天候を生かして寒天をはじめとし、お餅を乾物にする「こおり餅」など様々な乾物が作られています。
万能食品
乾物を使う料理というと、戻すのに手間がかかるように見えるかもしれませんが、素麺やドライフルーツ、ナッツ、ビーフジャーキー、干し野菜なども、みんな乾物です。
そのまま食べられるものも多いですし、すでに一手間かけた状態で乾燥させているので、料理の時短にもなります。水に戻さないといけない…という思い込みを外せば、切り干し大根は、味噌汁にそのまま入れれば、簡単にお味噌汁の具になります。茹でながら、煮ながらの「ながら戻し」でも十分に美味しく食べることができるのです。
また、乾燥の工程で食べ物の旨みや栄養素を食材に閉じ込めているので、パワーフードでもあります。
最近では、この保存性、栄養価、持ち運びのしやすさから、有事の際の備蓄品としても注目されています。もしもの時に、長引く不安の中で体調を崩す人は少なくありません。また食品アレルギーの人は、支給される食べ物が食べられないといったこともあるかと思います。こういった時に乾物ならば、素材を干しただけのものなので、安心して食べることができます。また有事の際に不足しがちな食物繊維も豊富です。しかも、まな板や包丁がなくても、調理ができると、注目されているのです。
皆さんの家には乾物はありますか?各ご家庭で常備することで、料理の時短はもちろんのこと、普段の料理の栄養価や美味しさがアップします。また、もしもの時には備蓄品としてすぐに使えるメリットもあります。皆さんの乾物の美味しい使い方を、ぜひ教えてください。
ミニアンケート