季節の移ろいを感じる木のある暮らし
【フージャースの建築めぐりvol. 01】植栽編
フージャースでは、多くの人の「欲しかった暮らし」を届けたいという想いから、住まいづくりをしてきました。このシリーズでは、住んでいる人が普段はあまり意識することがない、建物づくりにおける細部へのこだわりを紹介していきます。
今回のテーマは、植栽です。
建物が完成し、敷地に植栽が加わることで、一気にマンション全体が引き締まって見えます。完成時の植栽は、まだまだ枝ぶりも細く、葉も少なく花も咲いていません。しかし数か月後には、葉が生い茂り、花が咲き、季節ごとに様々な色合いを見せ、存在感を増していきます。
その時をイメージして、フージャースの建築担当は、植栽メーカーの畑に出向き、自分の目で見て選んできます。マンションが、豊かな緑を生み出すことで、少しでも街の景観に貢献したい。植栽という最後のアクセントにも、こだわりを持っています。
そもそもマンションの植栽には、どのような役割があるのでしょうか。
建物の周りに植えられた木々は、景観を豊かにし、住まう人や道行く人々の目を楽しませてくれます。そして、見えて欲しくないものを隠す役割や、道路との境界線となりセキュリティを形成する役割もあります。また、シンボルとなるような木々があれば、時の流れの中で共に成長を感じることもあるでしょう。
このような豊かな緑は、木陰をつくり木々の葉の蒸散効果により、気持ちのいい環境を作り出してくれます。
シンボルやポイントとなる木は、樹形や周辺の木々とのバランスも重要です。
木の形は様々で、左の写真のように幹が1本で直立の木(単幹)は、成長が早く上方にいくほど枝葉が茂ります。そして日陰を作りやすく暑い夏の日などは快適です。
右の写真のような根元部分が何本にも分岐している樹形(株立ち)は、一般的に幹が細めで成長の仕方が緩やかな傾向があります。樹木の種類は雑木が多く、自然の趣が強いのも特徴です。初めから枝葉が多いため植樹した直後でも存在感があります。
また、葉が落ちる落葉樹の場合は、植える場所によっては、葉や実によって周辺を汚してしまうこともあります。落葉樹にするか、一年を通じて緑の葉がついている常緑樹にするか、植える場所や見せたい景色によって樹木を選んでいます。
今回は植栽にこだわった物件を、3件を紹介します。
日根野の遺跡の趣を坪庭に表現
デュオヒルズ日根野ザ・プレミアム
大阪府泉佐野市 2020年5月竣工
大阪府の南部に位置する泉佐野市日根野は、遺跡や歴史的建造物が多い街です。
このプロジェクトでは、日根荘※1遺跡からインスピレーションを受け、植栽や外構計画を作りこみました。その街の趣を、マンションのアプローチやエントランス、坪庭に表現しています。坪庭の植栽は、建築担当が植栽メーカーの畑に出向き、イメージに合った植栽を選んでいます。
エントランスから見える坪庭は、日根荘遺跡の蔵※2の瓦を思わせる塀で囲い、植栽は色彩豊かに色づくイロハモミジなどの木々を配置しました。塀の向こう側に隣地の機械式駐車場が見えてしまうため、低い位置に枝が広がる樹木を選定し、視線を下に集めるように工夫をしています。
エントランスの植栽は、奥行き感を出すために数種類の樹木を選定し、色合い、高さに注意して全体のバランスを取りながら配置。
自転車置き場へ抜ける通路部分は、枝が広がらない背の低い樹木を選定。また、実の成る種類の木は、落ちた実が踏みつぶされるなどして、床のタイルを汚すことがあります。清掃に配慮して、実のならない種類の木を選定の対象としています。
イロハモミジの魅力を引き立て、絵画のような坪庭
デュオヒルズ大分中島
大分県大分市 2021年3月竣工
このプロジェクトは、大分府内城の外郭に位置し、城下町として栄えたエリアで、徒歩圏には桜の名所としても知られる大分川河川敷や、大分城址公園などの四季折々の豊かな自然にも触れられる場所に建つマンションです。どうすれば、この地にふさわしい格式を感じる共用部となるか、建築担当者は平面図のプランを考える際からどの視線でどう見せたいのか、視線の先に何があるかを三次元でイメージしながら計画しています。
坪庭には樹形にこだわり、竣工約一年前から探して選定したイロハモミジが、シンボルツリーとして鎮座しています。道路からもその存在が映え、品格のある坪庭となっています。
エントランスから坪庭を見ると、壁一面に広がる絵画のように見えます。そう見えるように、床、壁、天井までの大きなガラス張りの開口部を設けるデザインとなっています。
本当は、後ろに見える小学校を隠したいのですが、建築の制限があり塀は建てられません。そのため手前にインパクトを出すことで、視線を逸らす工夫をしています。
完成時点では、葉はまだ色づいていませんが、物件のパフレットには色づいたモミジのイメージパースがあります。秋になればこのような景色になることを想像し、樹形にこだわってイロハモミジを探しました。
海と空に映える木々のアプローチ
デュオヒルズ木更津
千葉県木更津市 2020年2月竣工
千葉県の房総エリアに位置する木更津。海に程近く、空の広がりも感じられるこの土地で、リゾート感をイメージして植栽を選んでいます。この物件の特徴的な点は、なんといってもこの馬のような特徴的な敷地の形(下図)です。この細長い敷地を、植栽豊かなアプローチ通路とする事で、他の物件には無いこの物件の魅力に変えました。
建物までの長いアプローチの左右には、駐車場や古い建物が残っているため、その景観を見せずに、より物件の世界観に引き込まれるような壁を計画しました。 建物入口までの距離が長いので、所々に曲線を用いる事で単調にならないよう工夫しており、リゾート感を演出するためにヤシの木やソテツなどを植えました。
唯一無二の敷地形状を活かしたアプローチと植栽は、住まう人が「家に帰って来た」と感じられる物件となりました。
あなたのマンションの植栽にはどのようなものが植えられていますか。たまには家に帰って来た際に、植栽の前で足を止めて、季節の移ろいや緑の香りを感じてみてはいかがですか。
次回は、「エントランスアプローチ編」をご紹介します。
シリーズ記事
【フージャースの建築めぐり】
vol. 02エントランスアプローチ編「建物の品格を表す玄関」
vol. 03エントランスホール編「居心地の良いエントランスホール Part.1」
vol. 03エントランスホール編「居心地の良いエントランスホール Part.2」