穏やかな暮らしを求めて見つけた「集う家」

ソロライフの家 取材記事 Vol.1

ソロライフの家 一人で戸建を楽しむ暮らし」(2021年9月17日掲載)では、テレワークが進み住む場所の選択肢も増えていることから、今後は都心部から郊外まで広いエリアで、1人の時間を大切にし、趣味も楽しめる「ソロライフの家」というニーズが増えてくるのではないか、という記事を書きました。
今回は「ソロライフの家」での暮らしを楽しんでいる方にお話を伺い、その暮らしぶりをご紹介します。

今回紹介するのは、神奈川県の三浦半島西部に位置する葉山の戸建てに、保護猫4匹とお住いのM.Kさん(以下、Kさん)。海岸まで歩ける場所に位置し、木造の立方体の家が並ぶ一角にあるKさんのお宅には、27畳の大きなリビングがあります。窓からは葉山の山が見え、屋上テラスからは富士山と夕焼けを一望できる贅沢な景色の住宅です。
Kさんは、毎日、東京・日本橋のオフィスまで1時間半ほど掛けて通勤し、事業戦略部門の第一線で活躍。家に友人を招くことが好きで、手に入れた広いリビングや屋上テラスでホームパーティをしたり、近所の海でマリンスポーツをしたりと、葉山での暮らしを満喫しています。

静かで穏やかに暮らせる場所を求めて

Kさんが葉山に移住を決めたきっかけは、40歳でそれまで暮らしていたパートナーと離れ、一人暮らしを始めたことから始まります。
「一人暮らしをきっかけに、45歳までに家を買おうと漠然と思うようになりました。今から思えば、女性が一人でローンを組めるのか、何歳まで返済し続けるのか考えたのかもしれません」。
Kさんは、早速都内で家探しを始めます。家探しの条件は、実家へのアクセスが良く、2LDKであること。そして、友人をたくさん招待できる広いリビングや、友人が泊まれる客間があること。自分がリラックスできる寝室があることでした。しかし、条件に合致する物件に出会えず、都内での家探しは断念します。

都会で生まれ育ち、常に第一線で仕事をしていたKさんですが、実は人の多い所が苦手で、静かで穏やかに暮らせるところに住みたいと考えていました。もともと海が好きだったことがあり、毎日の通勤を考えて、横須賀線沿線で改めて家探しを始めることに。その時に知りあった不動産会社が、鎌倉にある「エンジョイワークス一級建築士事務所」(以下、エンジョイワークス)です。エンジョイワークスで家を探すと決めてから、逗子周辺で30軒ほど見学するも、家はなかなか決まりません。そんな時、以前遊びに訪れた葉山でエンジョイワークスが販売していた分譲地「森戸川ヴィレッジ」に出会います。海が近いことや、静かな環境を一目で気に入り、そこにスケルトンハウスを建てることにしました。

スケルトンハウスで叶えた暮らし

戸建てを建てようと決めたのは、以前マンションに住んでいた時に上階の生活音に悩まされたことや、管理費を払い続ける必要がないという、マンションにはない魅力を感じたからでした。
今回Kさんが建てたスケルトンハウスは、家の「スケルトン」部分である、構造、外壁、窓、屋根、そして全館空調設備など、家の骨格となる部分をしっかりと造り、内装などの「インフィル」部分は、自由にプランニングして、間取りの可能性を無限に広げられる企画住宅です。
自由な間取りといっても想いを形にするのは難しいので、エンジョイワークスがサポートしながら、彼らの「家づくりノート」というツールを使って、実現したいライフスタイルを言語化し、方眼紙に間取りプランを書き込んでいきます。過去に宿泊したホテルや30軒以上の家を見てきた経験から、家に対する想いが次々に溢れ出てきて、Kさんが描いた間取りは10パターン以上にもなります。そんな想いを形にして出来上がった家は、穏やかでありつつ、人が集まれる工夫が沢山施されています。

・リビング

多くの来客があることを前提にした27畳の広いリビングには、ソファーとテレビ以外は何もない、すっきりした空間です。Kさんの好きな時間は、リビングの大きな窓から葉山の山を眺めている時や、お気に入りのソファーに座って真っ暗な空間で映画を見ている時だそうです。
「玄関前に生えていた木が、バルコニーの高さまで成長して、木の実を付けました。その木の実を、鳥やリスが食べに来るんですよ。その鳴き声を聞いていると、穏やかな気持ちになりますね」。

・キッチン

キッチンは壁付けです。リビングから風を入れ、調理中の臭いを換気扇で吸い込ませることで、室内に充満しないようにしています。キッチンと同じ高さの作業台は、調理の下ごしらえから来客時の配膳準備まで行える広さがあります。作業台から一段下がったカウンターは、ダイニングを兼ねており、食事や仕事もこのカウンターで行っています。

作業台の下に、食器や家電調理器を収納し、生活感を極力出さないようにしています。家電の電源ケーブルは、使用する時だけコンセントに挿し普段は収納しています。

・パントリー

キッチン横のパントリーは2畳の広さ。食品や日用品のストック、来客時に屋上テラスで使うクーラーボックスやBBQセットまで収納しています。
「パントリーの横には、全館空調用の設備スペースがあるため、この場所を思い切ってパントリーにしました。広い収納のおかげで、リビングにモノがないすっきりとした暮らしができています。大きな収納を作って本当に良かった」。

洗濯機スペースが、2階のキッチンの横にあり、家事を同時に進行したり、物干しまでの家事動線がスムーズ。

・屋上テラス

リビング前のバルコニーから階段を上がると、広い屋上テラスが。人を招くのが好きなKさんは、ここで友人とBBQをするそうです。

見晴らしも良く、富士山と夕日がとてもきれいに見えるご自慢の屋上テラスです。

・土間

玄関を入ると土間があり、自転車やアウトドアグッズが収納されています。海へは、家から水着のまま歩いていきます。帰って来たら玄関の外でシャワーを浴びて、そのまま土間へ。そこで水着を脱いで身体を拭いて、土間から部屋に上がるそうです。

・客間

1階には何も家具が置いていない客間があります。クロゼットには布団を3組収納し、いつでもお客様をお迎えできるようになっています。

・洗面所

洗面所下の収納は、一面ワイドな引き出しです。ここには来客用のタオル類が、収納されています。洗濯機を2階に設置しているため、生活感を出さずに来客の時にも広々と使ってもらえます。洗面所上には換気のための窓があり、リモコンで開閉します。パントリーや階段、土間にも、リモコンで開閉できる換気用の小窓があります。

・寝室

寝室のこだわりはオープンクロゼットと、照明です。調光ライトをクロゼットの仕切り壁の上部に取り付けて、直接光が目に入らないようにしています。

暮らしの中で感じるコミュニティの大切さ

この家で暮らすことで得られたことを伺うと、「引っ越す前はジムに通っていましたが、今は屋外でのアクティビティが増えました。海に入ったり、ウォーキングやハイキングをしたり。リビングから見える山に登って、森林浴もします。海や山からは、五感で感じられるものが多く、すっきりした気持ちになってリフレッシュできますよ」。
夜仕事が終わって葉山に戻ってくると、満天の星空が広がっていて、帰ってきたことを実感するそうです。

ご近所とのコミュニティが良好なことも話してくれました。
「マリンスポーツを通して、コミュニティができた他に、ヴィレッジの方たちとも仲良くしています。引っ越し時の顔合わせから仲良くしていただいています。夏には共有の庭でBBQしたり、散歩や掃除の際に顔合わせると日ごろから何気ない話をよくします。」。
ヴィレッジ周辺の方との関係も良く、お付き合いがあるそう。
「豪雨の日には町内会長さんが1軒ずつ声を掛けて回ってくださったり、住民同士でも日頃から災害対策の情報交換をしたり。倫理観や協調性が高い人が多くて、思いやりがあり、とても暮らしやすいです」とKさん。1人で戸建に暮らすには、自分らしく無理せず、人と緩やかにつながることも大事だと言います。また車ですぐのところに昔からのご友人も住んでいるそうで、友人や知人の間で暮らすことの安心感も感じているそうです。

10年後の暮らしを伺うと、「今の暮らしにとても満足しているので、住み替えることはないと思います。老後は施設などに入り、この家は姪に譲るつもり。相続に関わる費用は生命保険で賄えるよう配慮しています」。また、これまでの経験から、コミュニティの大切さや、介護の現場に担い手が足りないことも知っているため、「仕事をリタイヤしたら、ボランティアなど社会福祉的な観点で、コミュニティに参加したいと思っています」と話してくれました。

取材を終えて

私たちは、趣味を楽しむ暮らしを作るために、戸建てでのソロライフの可能性を感じています。Kさんの場合は、人を招いてホームパーティをするため10人以上の人がリビングに集える広さを確保したり、来客用のグッズを収納するスペースが必要だったりという点で、戸建てという選択肢が一番合っていたのだと思いました。

戸建てでも、隣との境界線を塀ではなく植栽や庭にして、共用スペースを設けることで、コミュニティが育っていくことを教えてもらいました。また戸建てでのソロライフだからこそ、今後は防災などの有事の観点から、共助につながるご近所とのコミュニティが重要だと改めて感じました。
この他にもKさんの体験談から、単身だからという理由で家を購入することが難しいと感じる点があることも知りました。特にローンが組めるか、返済できるかは、誰もが感じる課題となりそうです。これは私たち作り手も、欲しい人に欲しい家を届けるためにも、考えていくべき点です。