私たちが暮らす街は「HOME」(愛着のある場所/愛着が湧く街)なのか?
ホームスタジオ、ホームタウンというように、ホームには「故郷」や「心の拠り所」に似たニュアンスがあって、それは愛着のある場所を指す言葉です。今回のコロナで、この「HOME」を改めて考え直すタイミングにきているように思います。
コロナの影響で、人と物理的に距離を置くことが必要になり、それは移動距離や、暮らしの中での時間の使い方の変化にも影響を及ぼしました。移動時間や移動距離の変化は、私たちが感じている街のサイズ感覚も変えています。ある人は、これまで通勤していた都市がHOMEだったかもしれませんし、ある人は、自宅そのものがHOMEだったかもしれません。
コロナがもたらした移動や時間の変化は、暮らしに必要なものが近所で手に入ることに気づくきっかけになったし、隣近所の人とつながることの大切さを知ることにもなりました。そして実は、物理的な近さと、良好な関係性を兼ね備えた自分の隣近所、歩いて15分ぐらいの圏内がHOMEなのかもしれないと。
そして、これまで毎朝通勤していた人たちは、実際にはどこにも居場所がなく、どのコミュニティにも属していなかったことに気づき、それは知らず知らずのうちに、人の孤独につながっていたことを知ることにもなりました。
15分という距離間隔は、徒歩で出歩ける距離感で、時には自転車を使う距離にもなるでしょう。
パリ市長アンヌ・イダルゴが2020年に再選した時の公約に「15-minute city : 15分都市」という構想があります。これは、「車を使わずに、日常生活を徒歩と自転車で15分でアクセスできる街にする」という環境に配慮した都市計画政策のことです。これが実現すれば、車に占領されたパリのまちが、各エリアごとに充実し、食料品店、公園、カフェ、医療機関、学校、職場が揃うことになります。自動車優先で設計されてきた街は、街路が広くなり、週末には車両の通行が禁止され、市民のコミュニティスペースとして解放されるのです。
実はこういった取り組みは、今に始まったことではなく、社会の中でゆっくりと育ってきたものです。ポートランドの「20分圏内コミュニティ」や、オタワの「15分ネイバーフッド」などもあります。生活の拠点から街を考える取り組みが、世界ではゆっくりと進められてきたのです。
今回のコロナで、在宅で仕事をする機会が増え、移動時間がなくなったことで生まれた時間を使って、近所を散歩するようになりました。
これまでは知らなかった魚屋さんと顔馴染みになったり、近所によく通う喫茶店もできました。地域柄相撲にまつわる仕事をしている人が多い街なので、行司さんがいたり。毎日天気の心配をするおばあちゃんがいたり。これまで会社に通勤していたころには出会わなかった人ばかりです。
最初は、そんな人たちとの交流に少し躊躇している自分もいましたが、相手を思いやり、気遣うことでそんなわだかまりはすぐに消えていき、地域でのびのびと暮らす自分へと変わっていきました。そして、街へ出ることがさらに楽しみになっていったのです。
こうしてコロナを経て、徒歩15分圏内のコミュニティを見直しているわけですが、地域にどんな施設があるか、それがどれくらいの距離のところにあるのかの大切さを実感しています。そして暮らしを起点にした物理的な充実はもちろんのこと、適度で良好な人間関係を築くことの大切さも実感しています。
適度で良好な人間関係を築くために、私たちは相手を思いやる心を育てることが大切で、それはひいては地域への愛着を育てる、第一歩になるのではないだろうかと思います。
都市と地域との行き来が制限され、生活が変わった中で、私たちデベロッパーは、地域でどんな時間が流れ、どんな人たちがつながっているのか、本質的に足りないものは何かを考えないといけません。
コロナを経て変わろうとしている街への価値観、そして人の結びつきを見直すため、私たちはこれからコミュニティをテーマに調査を進めていきたいと思います。みなさんがコミュニティについて感じていることや関心のあることなどもアンケートを通して、お伺いしたいと思っています。ぜひ、みなさんのお考えなどをお寄せください。
※アンケートは、終了しています。
ミニアンケート