副業と地域活性
働き方が変わり、副業ができる環境が徐々に整ってきました。
通信技術の進化はリモートワークを可能にし、場所を選ばず仕事ができるようになりました。特にコロナ禍では在宅勤務が推奨され、わざわざ通勤せずとも仕事ができることが周知されました。本来であれば3年後ぐらいに実現していたであろう働き方の未来が、この1年で実現したような、そんな感覚です。
このように時間と場所に捉われない働き方が可能となったことに加え、2018年には国が先んじて「モデル就業規則」を改定。副業・兼業を推進したことで、事実上、副業は解禁となっていました。
副業の現状
副業については、民間企業も動きだしています。
株式会社マイナビが2020年10月に発表した「副業・兼業に関するレポート(2020年)」によると、副業・兼業を認めている企業は全体1910社の49.6%に上るといいます。また、ヤフー株式会社では、2020年7月に自社メディアのアドバイザーとシステム改善のスペシャリストを副業人材で募集したところ、104人の想定枠に4500人の応募が集まったというニュースもありました。これまで副業・兼業に及び腰だった金融業界でも、この動きは始まっています。みずほフィナンシャルグループは、一昨年秋に副業を認める制度を導入したのに続き、昨年12月より最大週休4日制を導入すると発表しました。
時間と場所を選ばない働き方(リモートワーク)と副業を組み合わせると、就業人口の約9割を占めるサラリーマンの働き方が、これから大きく変わるのではないかと期待が持てます。
副業・兼業制度を導入する企業側の狙いは何でしょうか。
前述した株式会社マイナビの調査では、企業が副業・兼業制度導入する理由は、1位「社員の収入を補填するため」(43.4%)、2位「社員のモチベーションを上げるため」(37.5%)、3位「社員にスキルアップしてもらうため」(33.8%)、4位「優秀な人材を確保するため」(28.0%)、5位「新しい知見や人脈を獲得するため」(26.1%)となっています。
1位「社員の収入を補填するため」と他のものでは、趣が異なっていることがわかります。1位は、社員の収入減少が前提となっており、ネガティブな理由のようにも聞こえます。
しかし、サラリーマンの収入減は企業のせいばかりではありません。制度改正の影響も大きいのです。2003年以降、ボーナス時の社会保険料アップや配偶者特別控除の一部廃止、定率減税の縮小・廃止など制度改正が相次ぎ、所得税も住民税も、厚生年金保険料も健康保険料もすべてがアップし続けています。そのため、サラリーマン手取りが年々減少し続けているのです。40歳以上で専業主婦の妻と15歳以上の子供がいる家庭では、この15年間で50万以上手取り額が減少しているというデータもあります。(出典:DIAMOND online 2020.1.9 掲載記事より)
2位から5位は前向きな理由で、少なくとも、この調査を回答した企業群においては、社員は副業を選択しやすい環境にあるのではないでしょうか。
副業のパターン
次に、副業を個人の目的に合わせてパターンに分けて考えてみたいと思います。4パターンありそうです。
- 自分のスキルを他で試す(雇用シェア型・プロボノ型)
これは、高いスキルをもった人が、別の会社で働く「雇用シェア型」や、ボランティアなどの活動にて自分のスキルを活かす「プロボノ型」などが考えらます。前者と後者の違いは、収入を得るためか否かの違いです。自分のスキルが他でも通用するか試しながらも、スキルを活かして、現在勤務している企業以外で貢献する場を求めている点が共通点になります。 - 新たなスキルを獲得する(スキル獲得型)
若手社員がITスキルや他の専門スキルを獲得するために副業をする「スキル獲得型」。
このパターンは若手の育成や、本業へのプラスの化学反応を期待できるところなので、企業側としても推進したいと考えるところだと思われます。 - やりたかったことを実現する(WILL実現型)
起業したり、地方出身のサラリーマンが地元の活性化のために、地元企業やボランティアで働くケースなどがこのタイプです。ここでは「WILL実現型」と呼ぶことにしました。地元に戻って活動する場合、これまではUターン転職しなければなりませんでしたが、副業とリモートワークを組み合わせることで、東京の企業に勤務しながら、地元に移り住むことが可能となってきました。地元でなくても、好きな地方で働くIターンもダブルワークも可能です。地方に行かずにダブルワークするケースもあると想定できます。 - 収入を得ることを目的に副業をする(内職型)
生計を立てるため、または趣味など好きな事をするためにお金を稼ぐ「内職型」。世に出ているさまざまなアンケートを見ると、この目的が最も多いようです。
今回、欲しかった暮らしラボでは(3)「WILL実現型」に注目し、中でも活動の拠点を地方に置くケースを取り上げていきたいと思っています。過疎化していく地方に対して、大都市で働くサラリーマンの意欲とスキルが流れ込めば、地方が再び活性化するチャンスとなり、社会的意義・影響は大きいのではと考えたからです。地方での副業を選択した個人にとっても、毎日満員電車で大都市に通勤していた時と比べ、「暮らし」が一変している点も気になっているポイントです。
次回は、「WILL実現型」で大都市に勤務地がある企業に勤務しながらも、地方に拠点を置く人を取材します。
彼らが地方に出たいと思った理由や、地方での暮らしの変化、移住したことで得た生き方や価値観、その魅力を伺いたいと思います。そして、そもそもWILLとは何かという本質に迫っていきたいと思います。
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