違いのわかる人
一流と言われる人とは
昔、「違いのわかる男」というコーヒーの宣伝がありました。この宣伝は、様々な分野の第一線の人を紹介しながら、最後の締めが「違いのわかる男」でくくります。その違いのわかる男が選ぶ商品、ということです。たしかに、一つのことを極めていく人には、その分野における微細な違いを見分ける能力が身についていきます。プロの料理人は、微量の調味料の差異が料理の味に与える影響や、火を入れるタイミングや素材の切り方・大きさなどが与える影響を、判別できるようになるのです。工芸や匠と呼ばれる人の仕事においても、同じようなことがいえます。たとえば器をつくる陶芸家は、毎日つくることで、ほんの数ミリの違いも認識できるようになるでしょう。これは才能の面もありますが、多くは日々の鍛練によって到達できるものです。
私たちは、日常で何も意識しなければ、多くのことは同じように見えてしまいます。しかしこの違いを理解し始めると、同じような風景や人々の行動の中に、小さな違いを発見していくことが可能になります。こうした観察をするためには、自らも実践をしなければなりません。
どの分野で実践をするかは、人それぞれでしょう。それは、どんなことでもいいのだと思います。有名な画家、デザイナーやシェフなど、一流と呼ばれやすい職業に目が行きがちですが、どんな仕事にも、この一流という領域があるはずです。この一流を極めていくと、仕事も暮らしも楽しくなります。一流と言われる人には、見たことや理解したことを書きとめたり、文章にしたりしながら理解し整理していくという特性もあります。つまり単に感性だけでは、一流にはなれないのです。
暮らしに美意識を、
美意識とは、美しいと思う心の動きと説明されています。人が何か行動をする時、その人の美意識によって行動していると言ってもいいでしょう。美意識とは、規範ともいえるでしょうし、知識によって理解されるものもありますし、さらには感性によったものもあるでしょう。特に「あの人は美意識が高い」という場合、普通の人よりも高い感性を持ち合わせているということなのですが、この感性はさきほどの一流と通じるところがあります。
この感性は、訓練によって身につくのだと思います。人は無意識で行動することが多いものですが、しかし意識的に行動する時間を増やすことで、無意識の行動を変えることにもつながるのでしょう。小さな差異にこだわって生きてみる。観察してみる。こうしたことの積み重ねが、暮らしの美意識を高めていくのだと思います。
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