マカロニスープと地域文化の行方

出典:fotek / PIXTA(ピクスタ)

先日行ったアンケートで「おふくろの味はなんですか」という質問をしましたが、その答えの中に「マカロニスープ」というのがありました。一体「マカロニスープ」とは、どこの国のどこの地域の食べ物なのだろう、と考えさせられたのです。
おふくろの味といえば、煮物など地域の中で代々守ってきた味と考えがちですが、そういう時代でもなくなってきました。多かったのは、ハンバーグ、カレー、スパゲティ、オムライスやチャーハン、鶏の唐揚げなど、子どもの好きそうなメニューが目につきました。このようなおふくろの味は、日本化した洋風、中華風のメニューが、食卓に多く出ていることの表れでしょう。

気候風土や伝統、地域文化とは

よく地域の伝統文化を守ろう、という話を聞きます。一般に「衣服」と「食」と「住まい」、この3つを合わせて「衣食住」と言いますが、これらは比較的地域の伝統や文化を表現しやすいものです。
私たちが今生きているこの時代は、大変便利な時代です。「衣食住」は、単に生存のためではなくなり、結果、より美しく、よりおいしく、より快適なものを私たちは求めるようになりました。また、そのための方法や知識も、多くの可能性から選択できるようになりました。しかし一方で、先のおふくろの味の回答のように、地域ごとの伝統は消えていきます。近代化という名のもとに、どの国のどの地域でも、習慣や暮らしは変化し始めています。特に「食」については、もっとも地域や個人の慣習に根ざしていて、変わりにくいものといえるのですが、その「食」でさえ「マカロニスープ」というような答えがでてくるのです。
それでも世界を旅すると、今はまだ、それぞれの地域の素材や香辛料、料理の仕方に多くの違いを見出せます。とくに味付けに関しては、子どもの頃から慣れ親しんだ味は、なかなか変えられないものでしょう。中国で食べる餃子も麻婆豆腐も青椒肉絲も、やはり日本のものとは違います。

地域文化は残っていくのか

さて、こうした今も残っている地域差は、これからも残っていくのでしょうか。残念ながら、なくなっていくのが一般的な傾向です。勿論この料理はこんな味というように、それぞれの料理の仕方や素材、調味料などは、残っていくでしょうが、それはレシピとして残っていくのではないでしょうか。そして、人々は毎日違うメニューを選択し、毎日違う地域の味を楽しむようになるでしょう。「地域の文化を守りたい」といいながら、実際の生活では、地域の差がないような生活をしているともいえます。こうした地域風土や文化を守っていくためには、実は強い「意志」が必要になります。色々選択できる時代に、あえて一つのことを選択する、という意思が必要なのです。街に出ればイタリアンも中華もある時代に、「我が家の料理はこれだ」というような選択です。洋服についても、私のスタイルはこれだというように、決めていく必要があるのかもしれません。そうしなければ文化として残っていかないと思うのです。レストランでの郷土料理、伝統的なお祭り、それらは生活とは切り離れたものとして、昔を懐かしんだり、観光用として見物の対象になりつつあります。
昔を懐かしんでも、時代は昔には戻りません。文化を守ると言っても、子どもたちが煮物よりハンバーグが食べたい、といえば作ってあげるのが親心かもしれません。
しかし、それでも「自分の地域」に目を向けて、郷土の文化というものを意識して、暮らしのあり方を選択していくことも、大事な視点だと思います。文化とは、暮らしに密着しているものなのです。我が家の味、地域の味、地域の素材にこだわってみるというのも文化を継承していく身近な方法のひとつです。

みなさんにとって、地域の文化とはどのようなものでしょうか。また、これからも守って存続させていきたいと思いますか。みなさんの考えをお寄せください。

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